【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 整形外科医、竹谷内康修

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2020年10月24日 公開日:2019年11月6日

腰痛

・湿布が腰痛に効かなくなってきた。
・病院に行っても腰痛が治らない。
・あちこち通ったけれどよくならない。
・腰が痛いのでゴルフができない。
・腰痛の原因が分からない。
・腰痛に効くストレッチ体操を知りたい。
・腰痛を予防する対策を知りたい。

 

腰痛の原因

腰痛は原因によって大きく2つに分けられます。ひとつは骨折や椎間板ヘルニアといった、レントゲンや医学的検査で原因が分かる腰痛で、これを「特異的腰痛」と言います。もうひとつは医学的検査では原因が分からない腰痛で「非特異的腰痛」と言います。

病院に行って腰痛の診断を受けたとしても、この原因の分からない腰痛が全体の85%を占めます。

ということは、医者は大半の腰痛を原因が分からないまま治療していることになります。

そのため多くの場合、病院では原因に対する治療を受けることができず、症状を抑えるためだけのロキソニンなどの痛み止めや湿布薬が処方されるのです。

腰痛の原因や根本的にどう治すかなどを院長の著書「腰痛を根本から治す」(宝島社刊)で詳しく解説しています。

腰痛を根本から治す 宝島社刊 竹谷内康修著

 

腰痛の発生する場所は?

腰とは、背中側の肋骨の下縁から、お尻の下縁までの範囲を指します。そこにある組織が腰痛を発生させる場所となります。

代表的な腰痛が発生する場所は、筋肉、筋膜、仙腸関節、椎間関節、椎間板、骨(腰椎、骨盤)です。時として、腎臓などの内臓や、皮膚も腰痛を引き起こします。

腰には実に多くの組織が集まっていて、それぞれが痛みの発生源になるため、どこから痛みが起きているのかを診断するのは、とても難しく、深い知識と豊富な臨床経験が必要になります。

9か所に分けられる腰痛の場所

ひと口に腰痛といっても痛む場所は様々です。前述のように、腰痛が起きる腰の範囲は、背中側の肋骨の一番下のところから、お尻の下縁までです。その広い範囲の腰において、痛みが起きやすい部位を数えると9か所にも及びます。なお左右を別々に数えています

腰痛の場所

まず、腰は大きく2つの部位に分けられます。骨盤より上の腰と、骨盤部です。骨盤より上の腰は、いわゆる腰痛を感じる部位です。一方、骨盤部は、腰が痛いと感じる場合もありますが、お尻が痛いと感じることもあります。医学的にはお尻の痛み(臀部痛)と腰痛は領域として一部重なります。

次に、骨盤部より上の腰と、骨盤部をそれぞれ中央部と、左側・右側に分けることができます。
骨盤より上の腰の中央部には腰椎(写真の1)があります。腰椎の右側・左側(2,3)には脊柱起立筋、腰方形筋などの筋肉があります。
骨盤部の中央部(4)には仙骨があります。仙骨の右側・左側(5,6)には腸骨があり、その腸骨を大殿筋や中殿筋などの筋肉が覆っています。中央部の仙骨と、左右の腸骨の間には、仙腸関節(7,8)という腰痛には極めて重要な関節があります。
また、骨盤より上の腰椎と、骨盤を構成する仙骨との境目の腰仙部(9)は、腰痛を起こしやすい部位です。
このようにひと口に腰痛と言っても、痛む部位がたくさんあります。
なお、腰部脊柱管狭窄症腰椎椎間板ヘルニアなどのように腰痛やお尻の痛みに加え、足腰に痛み・しびれといった坐骨神経痛を起こす病気については、別の項で解説しています。

腰痛と姿勢の関係

姿勢と腰痛

普段の姿勢が腰痛の原因となっていることが実は多くあります。

なかでも座っている姿勢が腰痛に最も関係し、悪い座り方は腰椎と骨盤の関節に負担をかけます。
例えば立っているときに比べ、座っている状態では1.4倍、悪い座り姿勢では約2倍の負担が腰の椎間板にかかると言われています。
もし悪い座り姿勢を毎日何時間も続ければ、立っている時の2倍近い負担をかけ続けることになり、腰の状態をじわじわと悪化させてしまいます。

また、立っている姿勢では通常、腰は軽く前に反っていますが、女性でハイヒールを履くことが多いと、その反りかえりが強まってしまいます。
強い反りかえりは腰の関節や筋肉に負担をかけため、ハイヒールで長時間立っていると腰痛が起こってしまうことがあります。

参考文献:スパイナルマウス®による日本人健常成人と背・腰部痛患者の姿勢分析

腰痛とストレスの関係

ストレスによる腰痛

一見、関係ないように思える心理的ストレスが腰痛の原因の一つであることが分かってきました。

上司と折り合いが悪い、仕事がはかどらない、夫婦関係が悪い、子育てが上手くいかない、身内が病気で倒れたなど、様々な心理的ストレスがあります。

心理的ストレスは、脳の働きを悪くさせて、腰痛を起こしやすくすると考えられます。

また、心理的ストレスは、体を緊張状態にすることで腰痛の原因となります。

どういうことかといいますと、緊張状態は、無意識に筋肉に力を入れさせます。

例えば、大勢の人の前でスピーチをすると、力が入って肩が上がります。これは緊張状態で、無意識に肩の筋肉に力が入っていることを表しています。
緊張状態では、自律神経である交感神経が働きますが、その交感神経が筋肉を収縮させるのです。緊張状態による筋肉の収縮が続くと、腰の筋肉が疲労状態に陥り、腰痛を起こすことになります。
このように心理的ストレスが腰痛の原因となるので、ストレスのマネジメントは、腰痛治療の一手段といえます。

参考文献:ストレス自覚度ならびに社会生活指標が腰痛・関節痛,肩こりに及ぼす影響

当院の腰痛の治療法

当院では腰痛に対し、手で行う高度なリハビリで治療を行っています。それに加え、姿勢の改善、ストレッチ体操の指導、ストレスのマネジメントなどによる多面的な治療を行っています。

腰痛におすすめのストレッチ体操

ハムストリングのストレッチ体操

腰痛のセルフケアでよく行われるのが腰周りのストレッチです。

そのなかで最も大切なストレッチの一つは、ハムストリングのストレッチです。ハムストリングは太ももの裏側にありますが、固くなってつっぱると、お尻に痛み引き起こします。

ラジオ体操でも行うように、開脚して膝を伸ばしたまま太ももの裏側を伸ばす要領で行います。数秒から30秒程度保持しましょう。一日のなかで繰り返し行ってください。

ハムストリングスのストレッチ

椅子に座ったまま行うハムストリングのストレッチ

腸腰筋のストレッチ体操

もう一つ大切なストレッチは、腸腰筋のストレッチです。腸腰筋は腰椎や骨盤を支え、股関節を曲げる働きをする非常に重要な筋肉です。

腰痛患者さんのほとんどに腸腰筋の機能障害が見られます。腸腰筋のストレッチの方法は、両足を前後に大きく開き、前足の膝を曲げながら、上半身を前へ移動させつつ下げて行います。

後ろ足のほうの鼡径部が伸びたように感じれば腸腰筋が伸びているのでOKです。数秒から30秒程度保持しましょう。デスクワークの合間などに日に数回行うと効果的です。

参考文献:慢性の非特異的腰痛患者に対するMcKenzie 法とストレッチング,その両方の介入効果

腸腰筋のストレッチ

椅子を使った腸腰筋のストレッチ

自分でできる簡単な腰痛対策

腰痛に良いマットレスとは

腰痛になると、マットレス(布団)が悪いからなのだろうと、何度も取り換える方がいます。

確かに体に合わないマットレスに寝ると、腰が痛くなることがあります。
患者さんから高反発と低反発のどちらのマットレスが良いのかとよく質問を受けます。

高反発のマットレスは、沈み込みにくいため、肩やお尻など、体の出っ張り部分で体重を支えることになります。すると腰椎には支えが少ない状態になり、痛みが出やすくなります。

一方、低反発マットレスは、体の出っ張っり部分が沈み込み、広い面積で体を支えることになります。

そのため高反発マットレスより腰にも支えがあることになります。

つまり、低反発マットレスでは、腰の負担が少なくなり、高反発マットレスより腰痛にはよいことになります。
また、ポケットコイル式や独立コイル式と呼ばれるものは、低反発マットレスに似た機能があるためお勧めです。

参考文献:体圧分散マットレス使用による腹部血管造影後の腰痛緩和の検討

腰が痛いときの寝方とは

仰向けに寝ると腰が痛い、横向きに寝ていると腰が痛くなるなど、腰痛があるときには、楽な寝方が見つかりにくいものです。ここでは特に立った姿勢で腰を後ろに反らすと痛い人におすすめの対処法をお伝えします。
まず、腰を反らすと痛い人は、仰向けの寝方は腰が痛くなりやすいため、避けたほうがよいでしょう。それでも仰向けで寝たい場合は、膝下に丸めた座布団やクッションを敷き、膝を立てた姿勢で寝るとよいでしょう。
オススメの寝方は、横向きで、腰を丸める寝方です。一度膝を抱えるようにし、そのままだときついので、少し戻してから寝るとよいでしょう。もちろん眠りに落ちれば寝返りを打って姿勢が変わりますが、夜目が覚めたらまた同じ姿勢に戻りましょう。朝には腰が楽になっていることが多いですよ

腰痛の対策にベルト、コルセットなどのサポーター

腰痛には様々な対策グッズがありますが、なかでもベルトやコルセットなどのサポーターは薬局などでも購入できます。
ベルトはコルセットよりは幅が狭く、幅が10センチ以下のものが多いです。骨盤を締め付ける目的で着用します。腰痛の場所は前述のように9つの場所に分けられますが、そのなかでも骨盤部の痛みへ腰痛ベルトを使います。腰痛ベルトではなく、骨盤ベルトと呼ばれることもあります。
サポーターは、20センチ位のものから30センチもあるものまで様々です。柔らかい素材のものもありますし、金属が入ってサポート力の強いものもあります。コルセットは、前述の9つの場所のうち、骨盤より上の腰の痛みに使用すると楽になります。

腰痛にロキソニンなどの痛み止め内服薬

痛み止めの薬を処方する医師

腰痛になった時には、ロキソニンなどの痛み止めの内服薬に頼るのは一つの選択肢です。

発症の初期やそれほど重症でなければ、効果があることが多いものです。

ただ、1か月以上続いているような慢性腰痛には効果が現れにくくなります。

また、痛み止めの内服薬は、胃の粘膜の障害を起こしやすいため、安易に長期間に亘って飲み続けることはお勧めできません。

ロキソニンなどは、緊急事態の一時しのぎと考えましょう。

 

湿布は腰痛の便利な対処法

病院でもらったり、薬局で売っていたりする湿布は、内服薬と同様の痛み止めが主成分となっています。それを皮膚から吸収させて腰痛を軽減させる薬です。湿布は冷やして効果を出すものではありません。湿布は内服薬ほど効果が高くないので、強い腰痛には効果が十分ではないかもしれません。ただ最近、内服薬と同等の効果のある湿布が現れました。残念ながらその湿布は病院でしかもらえません。

マッサージも腰痛の対処法

腰痛になると、近所のマッサージ店に駆け込む人も多いでしょう。マッサージは、腰の筋肉の緊張をほぐすので、腰痛に一定の効果があります。自宅で家族にマッサージをしてもらうのもよいでしょう。ただ、重度の腰痛や繰り返す腰痛に対しては、マッサージでは充分な効果を得られないことがあります。
また、マッサージは本来、国家資格を有する人が行うものですが、街に多いもみほぐしをする店では、無資格者がアルバイトで治療しているので、注意が必要です。

参考文献:腰痛時のマッサージ効果に関する筋電図学的研究

腰痛の効果的な予防法

腰痛は再発する人が多く、改善した後は予防に努めることが重要です。腰痛は多くの場合、腰の状態が悪化し、それがある一定レベルに達すると痛みが現れます。腰の状態は、不良姿勢と深く関係します。そのため腰痛予防には正しい姿勢の取り方を知ることが必須となります。
さらに、正しい姿勢をとっていたとしても、それが長時間に及ぶと腰に負担になります。そこで、姿勢を変えることも大切です。そこで、院長が著書やメディアで推奨している30分毎に姿勢を変える「30分ルール」についても後述します。
また、運動療法も腰痛予防には効果的です。腰痛の予防には腹筋の筋トレ!と考える人が多いのですが、なかなか長続きしないものです。筋トレよりも長続きしやすい腰痛予防のストレッチ体操をここではご紹介します。

腰痛予防のための正しい姿勢の取り方

姿勢による腰痛

腰痛の患者さんは、たいてい座り姿勢が悪いものです。

また、立ち姿勢より、座り姿勢のほうが大きく崩れやすく、腰への悪影響が大きいのです。

簡単にできる座り姿勢の改善法を2つお伝えします。

 

腰の丸まりを防ぐ姿勢改善法

腰が丸まったまま座っていると、腰への負担が大きく、腰痛の再発へ一直線です。腰の自然な反りをキープして座ると腰への負担を減らせます。そうするには、骨盤(お尻)を垂直に立てて座ります。とは言っても時間が経つと、骨盤が後ろに倒れ、それにつれて腰全体が丸まります。そこで、骨盤の後ろと背もたれとの間に、折りたたんだバスタオルあるいはクッションを挟み、骨盤を後ろから支えます。こうすると、腰の丸まりを予防できます。

上半身の姿勢改善法

姿勢が悪い人は、腰が丸まり、背中も猫背になって前かがみの姿勢になりがちです。つまり、上半身も崩れた姿勢になっています。それを修正する必要があります。まず、前項のように骨盤を垂直に立てた上で、背筋を伸ばします。そして背もたれに寄りかかります。すると、背もたれで支えられているので、楽によい姿勢を続けることができます。
最後に大切な点をお伝えします。パソコン作業をする際、肘が前へ出ると、必ず猫背になります。それを防ぐには、キーボードを手前に寄せて、肘をしっかり引いた状態にします。肘は肩の真下にあるのが理想です。そうすると上半身のよい姿勢をキープしやすくなります。

頻繁に姿勢を変える30分ルール

例えよい姿勢をとっていたとしても、長い時間、同じ姿勢をしていると、筋肉が凝り、あちこちが痛くなります。同じ姿勢を続けるのはよくないのです。デスクワーカーの人は、頻繁に立つ、立って仕事をしている人は、座って休憩をする、それが腰痛の予防につながります。30分間同じ姿勢でいるだけで、体の組織へのダメージが大きくなります。そのため30分毎にそれまでと異なる姿勢をとるようにすると、腰痛予防になります。単に正しい姿勢をとるだけではダメなのです。