【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2021年2月20日 公開日:2019年12月4日

腰部脊柱管狭窄症とは

腰部脊柱管狭窄症とは、背骨の中を走る脊柱管が狭くなり、脊柱管を通る神経が押されて腰痛、臀部痛、足の痛み、足のしびれ、足の脱力感などの様々な症状が出る病気です。

主な原因は加齢とともに生じる骨の変形や椎間板の膨隆、靭帯の肥厚などによるので、50歳以降の人に多くみられます。

院長の著書「自分で治す!脊柱管狭窄症」( 洋泉社刊)で腰部脊柱管狭窄症の症状、原因に加え、リハビリ、手術などの治療法について詳しく解説しています。

参考文献:腰部脊柱管狭窄症|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる

著書

腰部脊柱管狭窄症の症状

腰部脊柱管狭窄症の症状とは、これから解説するように多岐にわたります。また、人によってどの症状が強く現れるかは大きく異なります。その理由は、神経の圧迫部位や圧迫されている程度、神経へのダメージの蓄積の度合いが違うことによります。

腰痛、臀部痛

腰部脊柱管狭窄症は、腰痛や臀部痛を起こします。ただし、腰(腰椎)が悪くなって起こる病気にもかかわらず、腰痛は無いこともあります。そして、腰痛よりお尻の痛みのほうが多く見られます。また、歩くと腰痛や臀部痛、足にかけての痛みやしびれが強くなります。腰痛や臀部痛はあまり出ず、太ももや、すね、ふくらはぎ、足先の症状がメインの方もいます。

坐骨神経痛:足の痛み、しびれ

腰部脊柱管狭窄症のメインの症状は神経が圧迫されて生じる足の痛み・しびれです。この症状は坐骨神経痛とも呼ばれます。具体的には、お尻から太もも、すね、ふくらはぎ、足首にかけての痛みやしびれ、そして足の甲や足底、足の指のしびれです。

坐骨神経痛の発症初期には、すねあるいはふくらはぎだけに痛みが出ることや、足の指だけにしびれが出ることがあります。病状が進行すると太もも、ふくらはぎ、足底など広範囲に症状が広がっていきます。

皮膚の感覚異常

皮膚に薄皮が貼られたような感じ、ガムテープが貼ってあるように感じる、デコボコの道を歩いている、あるいは小石や砂利の上を歩いている感じがするなどの皮膚の感覚異常があらわれます。

また、皮膚を触るとチリチリとした感じがする、触っても何も感じないという症状も現れることがあります。これは、脊柱管を通る馬尾や、馬尾から枝分かれした神経の中には、感覚神経も入っていて、圧迫されると、その感覚神経が障害を受けてしまうことによります。

感覚神経が支配している領域の皮膚に、様々な症状が現れるのです。

間欠性跛行

間欠性跛行とは(間欠跛行ともいう)、歩くと足の痛みやしびれが増してつらくなるけれど、短時間立ち止まったり、座って休んだりすると症状が軽くなり、また歩けるようになるという症状のことをいいます。

立って歩く姿勢および歩く動作は、立っているだけで若干腰が反っていて、脊柱管を狭めて神経を圧迫しやすい上に、歩いて足を前後に動かすと、腰から足へ伸びる神経が牽引され、神経を痛めつけることになります。そして、歩き続けられなくなるほど症状が強くなる原因になります。

座って休む姿勢では、立った姿勢より腰の反りが減って脊柱管が広がるので、神経への圧迫が減って痛みやしびれが軽くなっていきます。家事や買い物、通勤などで長時間立っていると足の痛みで辛くなる場合も座ると楽になるのが狭窄症の特徴です。

間欠性跛行は主に腰部脊柱管狭窄症でみられる症状ですが、下肢の閉塞性動脈硬化症(近年は末梢動脈疾患PADという)でも現れる症状です。

足の脱力感

足に力が入りにくいと感じることも腰部脊柱管狭窄症の症状の一つです。歩くと足がふらつく、膝に力が入らない、膝がカクっと折れるなどの現れ方をします。これは、脊柱管を通る神経が足の筋肉を支配していて、神経の障害の程度が強い場合、筋肉に力が十分に入らなくなってしまうために生じる症状です。

このような症状は、腰部脊柱管狭窄症の重症度が高いサインだといえます。実際に足に力が入らなくなると、転びやすくなり、高齢者の場合は骨折につながるので危険な状態です。

足の麻痺

前述の足の脱力感よりさらに神経の障害がひどくなると、麻痺とよばれる力がほとんど入らない状態になります。

代表的な麻痺は、下垂足です。下垂足は、前脛骨筋に伸びていく第5腰神経の障害で起き、足首に力が入らず、足がダラッと垂れてしまうことを言います。歩くとスリッパが脱げますし、つまずいて転びやすくなります。大変危険なので、装具を足首に装着することになります。

足の筋肉の萎縮

筋肉をコントロールしている神経の障害が強く、また長期間に及ぶと筋肉が次第にやせ細ってきます。筋肉の萎縮があると、たとえ手術を受けたとしても、筋力が回復しない恐れが高くなります。

頻尿、残尿感、便秘などの膀胱直腸障害の症状

・ 膀胱障害の症状

頻尿、残尿感といった膀胱障害に関する症状も馬尾障害ではみられます。高齢者が就寝後に1回トイレに目覚めるのはよくあることです。しかし、今まで夜間のトイレが1回だったのが、2度も3度もトイレに行くようになった場合は、腰部脊柱管狭窄症による馬尾障害の症状の可能性があります。

また、日中にトイレへ行く頻度が明らかに増えた場合も要注意です。膀胱が尿を貯めるために広がることができなくなっていると考えられます。

おしっこをしたのに、全部出切った感じがせず、時間を空けずにトイレに行くと尿が出る場合、つまり残尿がある場合は、膀胱の機能に障害があります。

・ 直腸障害の症状

以前に無かった便秘がある場合、直腸の働きをコントロールしている馬尾に障害が起きていることが考えられます。便秘は腰部脊柱管狭窄症の症状とも考えられるのです。

歩くと尿意や便意を感じたり、勃起したりするなどの症状が現れることもあります。

膀胱や直腸の働きをコントロールする神経は、馬尾を通っているため、馬尾が強く圧迫されると上述のように膀胱や直腸に様々な症状が現れます。これらの症状がある場合、腰部脊柱管狭窄症のなかでも重症な部類に入ります。

会陰部の灼熱感

会陰とは、外陰部と肛門の間の部分を指しますが、そこに灼熱感(しゃくねつかん)が現れることがあります。これは馬尾が強く圧迫された場合の症状です。

肛門周囲のしびれ、ほてり

肛門周囲のしびれやほてりが馬尾障害でよくみられる症状です。

こむら返り

夜間に寝ていると、足が急につってしまい痛くて目が覚めるというのは腰部脊柱管狭窄症でよく見られる症状です。ふくらはぎやすねに、しばしばこむら返りが発生します。神経が圧迫されると、神経から筋肉に異常な信号が入ることでこむら返りが起きるのです。

参考文献:腰部脊柱管狭窄症 | 秋田県立循環器・脳脊髄センター

腰部脊柱管狭窄症の重症度分類

腰部脊柱管狭窄症の重症度を四段階で一般の方向けに分かりやすく分類しました(2020月11月改定)。これは院長のオリジナルです。ひと口に腰部脊柱管狭窄症と診断されても、程度が軽いのか、あるいは重いのか、患者さんには分かりません。しかし、多忙な病院の整形外科の先生が、どれ位重症なのかを説明してくれなることは少ないものです。各重症度での改善の見通しや治療など、目安も解説しました。

軽症

立位あるいは歩行で症状が現れる。間欠跛行はない、あるいは30分以上は続けて歩ける。
改善の見通し:薬やリハビリなどの保存療法で治ることが多いが、中等症、重症へと進行する人もいる。

中等症

10~20分程度で間欠跛行。
改善の見通し:薬などの保存療法では治らない人が増えてくる段階。根本的なリハビリ治療を早期に受けたほうがよい。仕事や趣味などで支障が大きいと、手術を受ける人もまれにいる。

重症

10分以下で間欠跛行あり。足の脱力・筋力低下があることも。
改善の見通し:根本的なリハビリ治療を受ければ改善する場合もある。しかし、保存療法で効果が出ない人が多いので、手術を受けるか検討する段階。

最重症

5分以下で間欠跛行。足の脱力・筋力低下がある。膀胱直腸障害が出ている
改善の見通し:保存療法で治らない人が大半だが、膀胱直腸障害が無ければ、改善する人もいる。一般には手術を検討すべき。

※重症度は固定されたものではなく、進んでしまう人も多くいます。重症の人も多くは初期や軽症から始まり悪化した結果、重症になったのです。また、重症度が高くなると保存療法で治りにくくなりますが、たとえ最重症でも保存療法で改善する人もいます。例外はどの段階でもあることをご承知おき下さい。

参考文献:腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011

腰部脊柱管狭窄症の原因

 

腰部脊柱管狭窄症は、様々な原因で脊柱管が狭窄し、神経が圧迫されて発症します。

脊柱管の狭窄は、ほとんどが加齢とともに生じます。狭窄の原因は、主に加齢で起きる背骨や周囲の組織の変形です。

 

狭窄を起こす主要な原因は6つあります。

 

多くの場合、複数の原因が合わさって狭窄を起こしています。それでは6つの原因を解説していきましょう。

 

原因1. 椎体の変形・骨棘

椎体の変形・骨棘

加齢とともに椎体(椎骨の前側にある円柱状の部分)が変形し、椎体の上下の縁(ふち)が出っ張ります。その出っ張りを骨棘といいます。骨棘が脊柱管を狭めます。

原因2. 椎間関節の変形・骨棘

椎間関節の変形

椎骨の後ろ側にある椎間関節が変形しすると、関節部の縁(ふち)に出っ張りができます。それを骨棘といいますが、骨棘が脊柱管を狭めてしまいます。

原因 3. 椎間板の変形・突出

椎間板の変形

上下の椎体の間にある円盤状の椎間板がつぶれて薄くなり、後ろへ突出することがあります。すると、椎間板の後ろに脊柱管があるので、脊柱管が狭くなります。椎間板が大きくはみ出したのが椎間板ヘルニアです。

原因4. 黄色靭帯の肥厚

靭帯の肥厚による圧迫

黄色靭帯は脊柱管の背中側にあり、上下の椎骨を縦方向につないでいます。加齢とともに黄色靭帯が肥厚すると、脊柱管を後ろ側から狭めて神経が圧迫される原因となります。

原因5. 椎骨のすべり・ズレ

椎骨のすべり ズレ

一つの椎骨が、下にある椎骨に対し、前側(お腹側)へずれたものを前方すべり、後ろ側へずれたものを後方すべりといいます。椎骨が前後にずれると、椎骨の中を縦に走る脊柱管は前後径が狭くなります。

腰椎では、第4腰椎が前側へずれた第4腰椎すべり症が最も多くみられます。腰椎すべり症は女性に多く発症します。腰椎のすべりがあっても脊柱管の狭窄が軽度であれば、症状は現れません。

原因6. 腰椎の側弯

腰椎の側弯

腰椎が横に曲がってしまう側弯は、曲がりの凸の側は椎骨の間隔が開きますが、凹の側は椎骨の間隔が狭まります。凹の側で椎体や椎間関節の変形が起きやすく、脊柱管が狭くなります。

脊柱管の狭窄が起きやすい場所

腰部脊柱管狭窄症は、神経が圧迫される部位によって、痛みやしびれの出る部位に違いがあります。そこで、神経が圧迫されている場所を把握することが大切です。神経が圧迫される場所は多い順に、第4腰椎と第5腰椎の間(L4/5)、第5腰椎と仙骨の間(L5/S)、第3腰椎と第4腰椎の間(L3/4)です。

腰部脊柱管狭窄症の3つの分類

腰部脊柱管狭窄症には3つのタイプがあります。神経根型、馬尾型、混合型の3つです。

神経根型とは

腰椎部の脊柱管には、馬尾(ばび)という脊髄から続く神経の束が通っています。その馬尾という神経の束から神経の枝が足に向かって左右に分かれて出て行きます。枝分かれした神経は椎間孔という椎骨の間にある隙間を通ります。そこで押されると神経根型の腰部脊柱管狭窄症になります。

左右どちらかの神経が圧迫された神経根型は、片足に痛みやしびれなどの症状が現れます。左右に枝分かれした神経が左右でそれぞれ圧迫されると、両足に痛みやしびれが現れます。

・ 神経根型の症状の現れ方の特徴

神経根は、馬尾から枝分かれして脊柱管を出ていく部分のことをいいます。馬尾から枝分かれするのは第1~第5腰神経、第1~第3仙骨神経があり、それぞれ左右対になっています。つまり、左右8本ずつの神経根があります。

8対ある神経根のうち、1本の神経根が圧迫されると、1本の神経根が支配している臀部や足の一部に症状が現れます。つまり、臀部、大腿、下腿、足の一部分に痛みやしびれなどが現れます。

馬尾型とは

脊柱管の狭窄が中心部で起きると、神経の束である馬尾が圧迫されます。それによる障害が馬尾型と呼ばれます。馬尾が圧迫された場合の症状とは、足のしびれと痛み、足の脱力感、皮膚の感覚障害、会陰部のしびれ・灼熱感、肛門周囲のほてり、歩くと勃起するなどです。

馬尾は膀胱や直腸の働きにも関係するため、頻尿や残尿感、便秘などの症状がでることもあります。馬尾型は神経根型に比べ、より重症な病態といえます。

・ 馬尾型の症状の現れ方の特徴

馬尾型の足のしびれ痛みの特徴は、足の広範囲に広がって現れることです。馬尾は、神経が枝分かれする前の束になった部分ですので、複数の神経が支配している領域に症状が現れるのです。そして、両足に症状があります。

また馬尾型では、痛みよりしびれのほうが強くあらわれます。

重症になると、神経根型では現れない前述のような膀胱直腸障害の症状も出ます。

混合型とは

混合型は神経根型と馬尾型の両方の症状を併せ持ったタイプです。 脊柱管の中心部で馬尾という神経の束が押されるだけでなく、脊柱管から枝分かれした辺りで神経根も圧迫されるタイプです。3つのタイプのうち、最も重症で、治りにくい状態といえます。

・ 混合型の症状とは?

馬尾型の症状と神経根型の症状の両方が現れます。足にしびれも痛みも出ます。混合型になるとかなり辛いことになります。

症状がある場所からどの神経が圧迫されているかが分かる

神経根型では、症状のある場所から、5対ある腰の神経根と、3対ある仙骨の神経根のうち、どれが圧迫されて障害を受けているのかをある程度推測することができます。一方で馬尾型は、神経の束が圧迫されているので、複数の神経にまたがった症状が両下肢に出ます。神経根型の典型的な症状のパターンと障害されている神経根の関係を説明します。

1. 太ももの外側、すね、ふくらはぎの外側の痛みしびれ

腰部脊柱管狭窄症で最も多い症状のパターンは、腰からお尻にかけての痛みに加え、太ももの外側、すねやふくらはぎの外側、足の甲、足先にかけての痛みやしびれです。これは、第4腰椎と第5腰椎の間のレベルで脊柱管の狭窄が起こり、第5腰神経の神経根の部分が圧迫されたことによる症状です。

2. 太ももの裏側、ふくらはぎ、足底の痛みしびれ

二番目に多いパターンは、腰、お尻、太ももの裏側、ふくらはぎ、足底にかけて痛みやしびれが出るパターンです。これは、第5腰椎と仙骨の間のレベルで脊柱管の狭窄が起こり、第1仙骨神経の神経根の部分が圧迫されたことによる症状です。

3. 太ももの前面、膝の内側、すねの内側に痛みやしびれ

前述の2つに比べて頻度は少ないものの、鼡径部(足の付け根)から太ももの前面、膝の内側、すねの内側に痛みやしびれが現れるパターンがあります。これは、第3腰椎と第4腰椎の間のレベルで脊柱管の狭窄が起こり、第4腰神経の神経根の部分が圧迫されたことによる症状です。

4. 太ももに加え、膝から下全体のしびれ

前述の3つは、神経根型の症状ですが、神経の束である馬尾が圧迫される馬尾型は、両足の広い範囲にしびれや痛みが出ます。太ももに加え、膝から下の全体にしびれが広がります。会陰部の灼熱感、肛門周囲のしびれをともなうこともあります。

第4腰椎と第5腰椎の間のレベルの狭窄が最も多く、第5腰椎と仙骨の間のレベル、第3腰椎と第4腰椎の間のレベルが続きます。

腰部脊柱管狭窄症の診断法

腰部脊柱管狭窄症の臨床的な診断は、詳しい問診と診察で行います。さらにMRIも行えば確定的な診断を下すことができます。ただし、重症でなければ、MRIは必須の検査ではありません。手術が治療の選択肢として考えられる状態であれば、MRI検査を受けたほうがよいでしょう。

一方、レントゲン検査は、神経が映らないため、診断上必要な検査ではありません。しかし、骨が変形しているかや、前述のすべりがあるかは分かるので、一応行うことが多い検査です。

腰部脊柱管狭窄症の病院での治療法

整形外科などの病院で行う脊柱管狭窄症の治療法は大別すると、3種類の保存療法(薬物療法、リハビリ、神経ブロック注射)と手術の4つがあります。

参考文献:腰部脊柱管狭窄症の診断と治療

腰部脊柱管狭窄症の薬物療法

腰部脊柱管狭窄症でよく使われるお薬は、近年、3種類が最も使用されています。ロキソニン、ボルタレン、セレコックスなどの消炎鎮痛剤、リリカという神経障害性疼痛治療薬、オパルモン、プロレナールといったプロスタグランジンE1製剤です。そのほかには、トラムセットやトラマールという弱オピオイド鎮痛薬(麻薬の類似薬)も坐骨神経痛がひどい場合に使われます。補助的にメチコバールやメコバラミンというビタミンB12製剤も使われることがあります。

腰部脊柱管狭窄症は、神経が圧迫されている病気ですが、薬で圧迫が大きく緩和するわけではありません。そのため、薬は痛みなどの症状を緩和しますが、薬で病気が治ることは期待できません。

参考文献:腰部脊柱管狭窄症に対するプロスタグランディンE1の効果

整形外科でのリハビリ

整形外科で一般的に腰部脊柱管狭窄症に行われているリハビリは、牽引療法、温熱療法、マッサージ療法、運動療法などです。残念ながら、腰部脊柱管狭窄症の症状がよくなるリハビリは確立されていません。各病院で、理学療法士が試行錯誤しながらリハビリを行っているのが現状です。また、リハビリを行う理学療法士の技術レベルはまちまちですので、リハビリを受けるのにも注意を要します。

腰部脊柱管狭窄症の神経ブロック注射

注射

神経ブロック注射は、痛みを起こしている神経を局所麻酔薬で一時的に麻痺させ、痛みの伝達をストップさせます。それによって痛みを緩和する治療法です。

神経ブロック注射にはたくさんの種類がありますが、腰部脊柱管狭窄症で行われるのは、主に2種類あり、それは硬膜外ブロック注射と神経根ブロック注射です。ブロック注射を行っている病院は多くはありません。

・硬膜外ブロック注射

硬膜外ブロック注射では、脊柱管の中にある硬膜外腔に局所麻酔薬を注入します。すると、薬が硬膜外腔を広がっていき、そこを通る多数の神経が麻痺します。それによって痛みが緩和します。腰部脊柱管狭窄症では、1本あるいはせいぜい2、3本の神経が圧迫されていますが、硬膜外ブロックでは一気に10本くらいを麻痺させます。例えていうと散弾銃で鳥の群れを撃つような方法です。次に説明する神経根ブロック注射と比べると、効果は若干劣ります。

・神経根ブロック注射

神経根ブロック注射は、腰椎から神経が外に出たあたりの神経根とよばれる部位へ局所麻酔薬を注入します。神経が圧迫されている部位のすぐ近くにピンポイントで狙います。例えると、スナイパーが標的を狙って撃つような方法です。針が神経根に当たると電撃痛という激しい痛みが、普段痛みやしびれがある足の部位に走ります。一本の神経を狙って注射するので、もし痛みがとれれば、手術でその神経の圧迫を取れば改善することができるだろうという診断にもなります。レントゲンの透視下で行うので、外来でその場でできる治療法ではありません。

ブロック注射はいずれも、神経の圧迫を改善する治療法ではありません。そのため神経の圧迫の程度が大きく、重症であればあるほど注射による症状の改善が一時的になる傾向があります。病院では、ブロック注射は手術を受ける前の最後の保存療法という側面があります。

腰部脊柱管狭窄症の手術

・ 手術を行う場合とは

手術は、足に力が入らない、膀胱や直腸の症状がある、臀部痛や、足の痛み・しびれで通常の日常生活が全く送れないなどの重症な脊柱管狭窄症の場合に行います。そこまで重症ではなくても、趣味のゴルフができない、生き甲斐の旅行へ行けないなどの理由で手術に踏み切る場合もあります。

手術では、足や膀胱直腸に関係する神経の圧迫を取り除きますが、手術の操作で既に傷んでいる神経にダメージを与えることもあり、相当の危険があることを覚悟して行います。

参考文献:腰部脊柱管狭窄症の保存的治療例と手術的治療例の比較検討

・ 手術を受ける病院・先生選び

いざ手術を受けることにしても、どこの病院でどの先生の手術を受ければよいかに悩むものです。腰部脊柱管狭窄症の手術は、数多く手がけている病院がたくさんあります。また、経験を積んだ先生も大勢います。目安として腰の手術を年間100件以上手掛けているような病院を選んで受診し、担当の先生が丁寧に説明をして下さり、信頼できそうであるかが最大のポイントになります。

腰部脊柱管狭窄症では、手術で症状がよくなることが多いのですが、期待したほどよくならなかった、症状が変わらない、逆に悪化してしまったというトラブルが意外に多いのです。期待通りにいかない場合に後悔しないためにも、担当医が信頼できる先生かどうかが最も大切です。

腰部脊柱管狭窄症のストレッチ体操による治療法

腰部脊柱管狭窄症は、神経が圧迫されて発症しますが、腰椎を前に曲げると脊柱管が広がって神経の圧迫が緩和します。院長は、腰椎を前に曲げて脊柱管を広げるストレッチ体操を長年にわたって著書や雑誌などで紹介してきました。なかでも簡単に行える2つのストレッチ体操をお伝えします。

横向きで行う膝抱え体操

もし左足に痛みやしびれが出ている場合は、左側を上にして横向きに寝ます。次に両膝を両手で抱えて胸に近づけ、腰を最大限に丸めます。しっかり腰を丸めたら、形を崩さないようにしながら力を抜き、その体勢を2~3分キープします。1日に数回行いましょう。下の写真をご参照ください。

座って行う腰丸め体操

座って行う腰丸め体操は、仕事や家事の合間に手軽に脊柱管を広げられる便利な体操です。椅子に座って体を前に倒して最大限に腰を丸めます。30秒位キープします。1日にこまめに何度も行って下さい。

膝抱え体操

院長が考案したストレッチの横向きで行う膝抱え体操

腰丸め体操

座ってできるストレッチの腰丸め体操

※股関節が固い人は、股関節に負担を掛けない範囲で腰を最大限に丸めて下さい。また、膝抱え体操や腰丸め体操で、症状が強くなる、あるいは改善しない人は中止して下さい。

腰部脊柱管狭窄症のリハビリでやってはいけないこと

前述のように、脊柱管は腰を前に丸めると広がります。逆に、腰を後ろに反らすと脊柱管が狭くなり、神経が強く圧迫されます。そのためかがんだり、しゃがんだりすると足腰の痛みが楽になり、腰を反らすと症状が悪化します。ですから腰部脊柱管狭窄症の患者さんは、腰を反らすリハビリは、症状を悪化させる危険があるので、やってはいけないことだといえます。
ただし、軽症な人のなかには、椅子に座ったままであれば、腰を反らすリハビリを行っても悪化しない場合もありますので、そういう方は、座ったまま腰を反らすリハビリであれば行ってはいけないわけではありません。
非常にまれですが、腰部脊柱管狭窄症でも腰を丸めると症状が悪化し、反らすと楽になる患者さんもいます。もちろんそのような人は腰を反らす体操を行っても構いません。

腰部脊柱管狭窄症の当院での治療法

当院は腰部脊柱管狭窄症の保存療法を長年にわたり専門的に行っています。とくに手を使ったリハビリ治療を主に行っています。