【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2020年10月27日 公開日:2019年11月6日

・朝起きると痛い。
・靴下を履くときに痛くなる。
・洗顔でかがむと痛い。
・痛くて長く座っていられない。
・痛み止めの薬で楽にならない。
・良くなったり悪くなったりを繰り返して治らない。

腰椎椎間板ヘルニアについて

腰椎椎間板ヘルニアは一般の方にもよく知られている有名な病気です。それは、ひどい腰痛や足の痛み・足のしびれを引き起こし、日常生活に支障を来すほど厄介で、多くの人がかかる病気だからです。

腰痛の代名詞とも言えるヘルニアですが、正しい診断と適切な治療が必要です。

腰椎椎間板ヘルニアに漫然と薬だけで治療をされていたり、すぐに手術を勧められたりしていませんか?

院長は整形外科医として病院に勤務していたときに、腰椎椎間板ヘルニアを診断するとともに、薬・注射・手術などで治療をしてきました。

それらは、ある程度有効ではありますが、副作用や危険性も同時に併せ持ちます。そのため当院ではそれらは使わず、安全な手で行うリハビリで治療をしています。ヘルニアに関する豊富な臨床経験から、病態、症状、画像、原因、自分でできるリハビリなどを解説します。

椎間板とは

脊柱(背骨)は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨などたくさんの椎骨が連結してできています。その椎骨同士をつなげているのが軟骨でできている椎間板です。体をかがめたり、後ろへ反らしたりする時、椎骨は骨であるため硬くて変形しませんが、その代りに軟骨の椎間板が変形して脊柱が屈曲・伸展します。

椎間板は、楕円形で円盤状の形をしています。そして線維輪、髄核、終板という3つの組織からできています。ところで、椎間板の構造は、お饅頭に似ています。お饅頭の皮にあたるのが線維輪で、あんこが髄核です。線維輪は硬い組織でバームクーヘンのように層を作り、髄核を取り囲んでいます。

髄核は椎間板の真ん中にあり、水分が多く白くてゼリー状をしています。髄核は、生まれたばかりの時に水分量が最も多く、年齢と共に枯れるように水分が減っていきます。

終板は椎間板が背骨にくっつく平べったい接続部分です。

椎間板には血管が少なく、大人になると全くなくなります。血管が少ないので、椎間板には栄養が行きにくく、一度傷つくと元に戻ることはほとんどありません。

椎間板は年を取ると水分を失い、つぶれて扁平化していきます。年を取ると身長が縮む原因の一つが、椎間板の扁平化です。

椎間板ヘルニアとは

椎間板ヘルニアは椎間板が腫れて通常より出っ張った状態のことを指します。椎間板の線維輪が老化や怪我(強い外力)で傷むと亀裂が生まれ、外側にふくらんで起こります。

 

椎間板の一部分が出っ張ったり、全体的に出っ張ったりします。椎間板の外側の線維輪に傷ができて張り出す場合と、さらに椎間板の内側にある髄核が外側の線維輪を突き破って外に飛び出る場合があります。

 

髄核が外に飛び出て、椎間板から離れていくこともあります。椎間板の後側方の線維輪は、構造上最も弱いため、そこから膨隆しヘルニアが起きやすくなっています。

 

腰椎椎間板ヘルニアのMRI画像

MRI矢状断像-腰椎椎間板ヘルニア

MRI横断像-腰椎椎間板ヘルニア

左のMRIは腰椎を前後方向に輪切りにした画像です。左側がお腹側で、右側が背中側です。椎間板の髄核が後方(背中)に飛び出し神経の通る脊柱管を圧迫しています。 右のMRIは、腰椎を水平方向に輪切りにしたMRIです。画像の上がお腹側、下が背中側、右が左側、左が右側です。身体を足から頭へ見上げたような向きです。やや体の左側から後方へヘルニアが出ています(後側方ヘルニア)。

腰椎椎間板ヘルニアの症状

腰椎椎間板ヘルニアの主な症状は、腰痛、お尻の痛み、足の痛み、足のしびれです。進行すると、足の筋力低下、膀胱直腸障害といった怖い症状も起きます。一般に腰椎椎間板ヘルニアは、腰痛だけでなく、痛みやしびれがお尻、太もも、ふくらはぎ、すね、足の甲や足底、さらには足の指などに現れます。足へ放散する痛みは坐骨神経痛とも呼ばれ、ほとんどの場合、片方の足に症状が出ます。腰椎椎間板ヘルニアは、臨床的に腰と足の両方に症状が出るのが特徴です。腰痛だけの場合もありますが、足に症状がないと椎間板ヘルニアが原因と診断されることはまれです。

参考文献:腰椎椎間板ヘルニア患者における腰椎の運動時痛と臨床症状・ヘルニアの部位・病型の関連

重症の腰椎椎間板ヘルニアの症状

重症の腰椎椎間板ヘルニアでは、足の皮膚の感覚が鈍くなったり、足に力が入りにくくなったりします。ひどいと足首に力が入らず、つまずきやすくなったり、スリッパが脱げやすくなったりします。

この状態が長い間続くと、痛みが消えた後もヘルニアの後遺症として皮膚の感覚異常と足に力が入りにくいといった筋力低下が残ってしまうことがあります。

通常は片方の足だけに痛みやしびれが出ることが多いのですが、ヘルニアの出っ張りが大きくなると、両足のしびれや痛みが出たり、膀胱や直腸をコントロールする神経(馬尾)まで障害を起こし、会陰部のしびれや残尿感、便秘が出現したりすることもあります。

腰椎椎間板ヘルニアはこんな時に痛みます

腰椎椎間板ヘルニアでは、腰を曲げたり伸ばしたりすると腰痛や足の痛み、足のしびれが悪化します。特に前かがみで悪化することが多いです。

また、咳やくしゃみで痛むのもヘルニアの大きな特徴です。さらに、立ち座り動作、歩行、寝返りで痛みが出ることがあります。

歩くと症状がひどくなり、しばらく立ち止まると痛みが和らぎ、再び歩けるようになることもあり、これを間欠性跛行といいます。

腰椎椎間板ヘルニアと痛みの関係

ヘルニアがそばを通る太い神経(神経根)を押したり神経に炎症を起こしたりすると腰痛や足の痛み、足のしびれが起きます。

椎間板には神経が分布していて、椎間板自体が傷むことで痛みが出ることも考えられています。

腰椎椎間板ヘルニアの原因

腰椎椎間板ヘルニアの主な原因は、繰り返し椎間板に力が加わることによって小さい傷ができ、それが積み重なっていくと、椎間板の外側にある線維輪に裂け目ができることです。

裂け目から椎間板の内側にある髄核がはみ出して”ヘルニア”となります。さらに、悪い姿勢を続けるなど、長い時間にわたり椎間板に圧力が加わると、椎間板が通常より外側に張り出します。

また、椎間板は水分を多く含んだ組織なのですが、年齢と共に水分が減り柔軟性を失います。この老化現象も椎間板の傷みの原因となります。

椎間板に傷をつけやすいのは、繰り返しの動作や腰への慢性的なストレスです。持ち上げ動作などの単純作業の繰り返しやスポーツなどがその例です。また、急に強い力が腰へ加わっても椎間板は傷つきます。重いものを急に持ち上げることや、くしゃみもヘルニアを引き起こすのです。

いずれにしても、長い年月をかけて蓄積した椎間板の傷みによってヘルニアが起きるのです。

腰椎椎間板ヘルニアが起こる年齢は?

腰椎椎間板ヘルニアは20代から40代の方に多く発症します。青壮年の方に多いと言えます。10代では椎間板がまだ老化していないので、比較的少ないですが、まれになる方もいます。

50代以降になると、ヘルニアと似たような症状を起こす腰部脊柱管狭窄症のほうが多くなります。しかし、高齢者でも椎間板が若く保たれている場合は、ヘルニアになることがあります。

腰椎椎間板ヘルニアの当院での治療法

当院では腰椎椎間板ヘルニアに対し、リハビリ治療を数種類、組み合わせて行っています。腰椎椎間板ヘルニアの当院での治療法は別のページでご紹介しています。

院長考案の腰椎椎間板ヘルニアのストレッチ体操

腰椎椎間板ヘルニアでは、腰を前に曲げると椎間板が後ろへ押し出され、神経がより圧迫されて足腰に坐骨神経痛が現れます。そこで、リハビリとして、腰を反らし、椎間板を元に戻すストレッチ体操がよく行われます。それをマッケンジー体操といいます。
マッケンジー体操は、膝をまっすぐに伸ばした状態で行いますが、膝が伸びていると、腰から足へ走る坐骨神経がピンと張った状態になっています。すると、人によってはマッケンジー体操をしても効果が現れにくくなります。
そこで当院の院長が考案したのが膝を曲げたままた腰を反らすストレッチ体操です。膝を曲げておけば神経が緩んだ状態で、腰を反らせます。下の写真のような姿勢を最初は30秒位から行って下さい。問題なければ1分位行い、休みながら2~3回繰り返しましょう。

腰椎椎間板ヘルニアのストレッチ体操

院長考案の膝を曲げたまま腰を反らすストレッチ体操

腰椎椎間板ヘルニアの病院での治療法

痛み止めなどの内服薬

腰椎椎間板ヘルニアで病院の整形外科を受診すると、ロキソニンなどの内服の消炎鎮痛薬が処方されます。ロキソニンが効かないようなひどい坐骨神経痛には、リリカという神経に強い作用をもつ痛み止めの薬が出されます。リリカが効かないと、トラムセットやトラマールといった麻薬類似薬が使用されます。
リリカやトラムセット、トラマールは、強い鎮痛作用がある代わりに、めまいや吐き気などの副作用が出る人が多く、注意が必要です。

神経ブロック注射

神経ブロック注射は、主に硬膜外ブロック注射と、神経根ブロック注射の2種類が行われます。腰椎椎間板ヘルニアでは、神経が押されているので、その神経を薬で麻痺させて痛みを抑えます。具体的には、局所麻酔薬を坐骨神経の根元のところに注入します。
坐骨神経は、複数の神経が束になったものですが、そのうちの一本の神経をピンポイントで麻痺させるのが神経根ブロック注射です。一方、多量の薬を注入して複数の神経を同時に麻痺させるのが硬膜外ブロック注射です。神経根ブロック注射は、硬膜外ブロック注射より効果が高いものの、注射の際の痛みが強く、レントゲンの透視下で行う必要があり、実施している病院は多くありません。

参考文献:腰椎椎間板ヘルニアに対する神経根ブロックの治療効果

椎間板の内部を融かす注射

2018年に日本へ導入されたヘルニコア(コンドリアーゼ)という注射薬は、椎間板の内部にある髄核に含まれるグリコサミノグリカンを分解します。すると、椎間板の内部の圧力が減り、椎間板の出っ張り(ヘルニア)が小さくなって坐骨神経痛が軽減します。飲み薬ではないので、腰の奥深くにある椎間板まで針を刺して注入します。
導入されて間もないため、ヘルニコアの効果がどれ位あるのか、まだ十分に分かっていません。また、椎間板の内部を酵素で融かすため、腰椎が不安定になる副作用が心配されています。実施している病院は少ないのが現状です。

参考文献:【整形外科の注射・ブロック療法のコツとピットフォール】 コンドリアーゼを使用しての腰椎椎間板ヘルニアに対する治療 適応と手技

物理療法によるリハビリ

理学療法の一種である干渉波、超音波、ホットパック、ウォーターベッド、牽引等の物理療法が病院でよく行われます。症状の強い腰椎椎間板ヘルニアでは、物理療法での改善は容易ではありません。

参考文献:腰椎椎間板ヘルニア 理学療法診療ガイドライン

ストレッチ体操などのリハビリ

リハビリ施設のある整形外科の病院では、腰椎椎間板ヘルニアに理学療法士がマッケンジー体操などを指導していることが多いようです。前述の院長考案のストレッチ体操もぜひ試してみて下さい。

手術はどういうときに受ける?

内服薬やブロック注射、リハビリなどの保存療法で改善せず、日常生活での支障が大きい場合は手術となります。どれ位痛みが強いと手術をするのかという基準はありません。辛く感じる程度や、日常生活での支障の大きさは人それぞれだからです。

また、病院側の事情もあります。手術が得意な病院では、すぐに手術を勧めるかもしれません。また、リハビリが得意な病院ではあまり手術を勧めないかもしれません。どちらが正しいということはなく、手術に関する絶対的な基準はありません。ある意味、手術を受けるかどうかは患者さん本人が決めるものと言えます。

ただし、手術を必ず受けるべき状態があります。ヘルニアが大きくなって排尿機能が低下したときや、急に足の力が入らなくなってきた場合です。

参考文献:腰椎椎間板ヘルニアをめぐるいくつかの問題点について

腰椎椎間板ヘルニアQ&A

どれ位でよくなりますか?

まずは、そもそも診断が正しいかどうかがポイントになります。「整形外科で椎間板ヘルニアと言われました」という患者さんを診察すると、なぜヘルニアと診断したのだろうと不思議になることが度々あります。腰痛は診断がとても難しい症状なのですが、確かな証拠がないのに安易にヘルニアと診断されていることがよくあります。

もし本物のヘルニアだとすると、どれ位でよくなるかは個人差が大きく、また体の状態によって違いがあるので一概には言えませんが、通常2~3回の治療である程度の効果が表れてきます。ほとんどよくなるまでは、2、3ヶ月から半年位と幅があります。腰椎椎間板ヘルニアは、何もしなくても自然に縮小することがあります。

参考文献:腰椎椎間板ヘルニアの自然縮小とその臨床的意義について

治療でヘルニアはなくなるのですか?

必ずしもヘルニアが治療で消失するわけではありません。MRIを撮影してみると、治療前に比べてほとんど大きさが変わっていないにもかかわらず、症状は消失していることはよくあります。

ヘルニアをなくすことより、症状を良くし、日常生活を送れるようにすることがポイントとなります。

一度ヘルニアが良くなれば再発はしないのですか?

ヘルニアはしばしば再発することがあります。現在の症状を良くするためだけの治療よりも、いかに再発を防ぐかに重点を置いてたリハビリ治療が重要です。

どんなヘルニアでも良くなるのですか?

当院では数多くの患者様がヘルニアの痛みから解放され、日常生活を送れるようになっています。しかし、ある病気をもつ全ての人に効く治療法はないのも事実です。もし当院の治療で効果が十分に出ない場合、連携している脊椎外科医に紹介致します。