【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 整形外科医、竹谷内康修

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2020年11月14日 公開日:2019年11月6日

正常な頚椎(首の骨)は緩やかに前方へカーブしています。頭の重さはボーリングの玉ほどありますが、このカーブのおかげで頭が体の真上に位置してくれるので、首や肩の筋肉は必要最小限の力で頭の重さを支えることができます。 この首のカーブが無くなり、首の骨がまっすぐな状態になっている首を、ストレートネックと呼びます。ストレートネックになると、頭の位置が体よりも前方に移動することになり、首の関節や筋肉に何十キロという負担がかかってしまいます。そのため、首のコリや痛みや頭痛など様々な症状の原因となってしまいます。 首の不調で整形外科を受診し、レントゲンでは骨に異常が見つからなかった場合に、ストレートネックであることを伝えられることがありますが、骨自体には異常がないため、整形外科では有効な治療方法がありません。

ストレートネックの原因

ストレートネックは生まれつきのものではありません。背骨は首から背中、腰と骨盤につながっており、全体としてゆるやかなS字のカーブを描いています。デスクワークなどの座ったままの姿勢が続くと、腰や背中が丸まり、バランスを取るために自然と首が前方に移動します。その時に背中から首にかけての背骨が真っ直ぐの状態になるのです。 この状態は一時的なもので、正しい姿勢に戻すことで首の骨が真っ直ぐの状態も、元の緩やかな前方カーブに戻り、ストレートネックにはなりません。しかし、首が真っ直ぐになる悪い姿勢を長時間、また長い期間続けていると、関節や筋肉がその状態で固まっていき、姿勢を戻しても背骨のカーブが真っ直ぐのまま戻らなくなってしまいます。ストレートネックは長時間のパソコン作業や、スマートフォンを使用する姿勢によっても増加していると言われています。

参考文献:頭痛とストレートネック : 多くの頭痛の原因は頸椎にあった : その原理と対策方法は

ストレートネックによって引き起こされる症状

肩こり、首こり

起きている間は常に首へ負担がかかり休まる暇がないため、首・肩こりが慢性化してしまいます。重症化すると寝ている間、枕の高さが合わないだけでも首に不快感や痛みを感じるようになります。

首の痛み

ストレートネックの状態は、バランスが良い状態に比べて、頭の重さの何倍もの負担が首にかかってしまいます。この状態が長期間続くと、関節や椎間板が変形し、首の痛みの原因になります。

頭痛

首の関節、筋肉の負担は、緊張性頭痛や頚性頭痛の原因になります。ストレスや過労、睡眠不足なども頭痛の要因の一つですが、首に負担がかかる姿勢が問題の根底にあることが多くあります。

寝違え

関節や椎間板の変形や筋肉の硬直など、首の状態が悪くなると寝違えを起こしやすくなります。旅行などでいつもと枕を使うことも寝違えの要因の一つですが、首の状態が悪いことで、環境の変化に対応できなくなっていることが、根本の原因と言えます。

ストレートネックの治し方

一般に整形外科などで行われている首への牽引(けんいん)療法や、首を持ち上げてカーブを作るような枕だけで、ストレートネックが改善することはありません。 猫背などで背中や腰のカーブが崩れると、バランスを取るためにストレートネックになっているのです。そのため首の治療をするだけではなく、背中や腰のカーブも含め全体的に正常に戻すことが必要になります。

 

当院のストレートネックのリハビリ治療

当院のリハビリ治療では、まず背骨全体の姿勢を検査し、負担がかかっている部位を分析します。その後、首の関節の動きを一つ一つチェックし、動きが悪くなっている部分、過剰になっている部分を特定します。

動きが悪くなっている部分を手で調整することによって、背骨のカーブが正常化し、頭を支える筋肉のバランスや首にかかる負担が改善されます。背骨全体のカーブが正常になれば、頭の位置も正常な位置に戻り、それにしたがってストレートネックも自然な前方カーブに戻っていきます。

参考文献:PC画面からのユーザの顔距離測定およびストレートネック予防への応用検討