【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 整形外科医、竹谷内康修

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2019年11月6日 公開日:2019年11月6日

寝違え

・痛みがひどくて首を動かせない。
・枕が合わず寝違えた。
・首が痛すぎて頭痛もする。
・首と背中が痛い。
・寝違えを頻繁に繰り返して困っている。
・寝違えを治すにはどこの病院へ行けばいいのか。
・湿布やロキソニンなど痛み止めが効かない。

寝違えとは

寝違えとは、起床時に首の痛みや肩、肩甲骨、背中、脇の下等に今までに無かった痛みが生じることです。

首を動かしたときの痛みが強く、酷い寝違えは痛みで首が固まったように動かせなくなり、何日も痛みが長引くこともあります。また、痛くて起き上がれないこともあります。

首の寝違えは、朝起きて首の痛みに気付くため、悪い寝方で首を違えて痛みが起こったと考え、「寝違え」と言われるようになったのだと思われます。

しかし、医学的には寝違えという病名はなく、英語でも寝違えという単語はありません。寝違えたような痛みは、実は、日中起きている間にも急に発症します。寝違えたときの寝方がただ一つの原因ではありません。

寝違いを医学的に説明すると、首の痛みを生じる頚椎症という病気が、朝起きた時に発症したものと言えます。それを「寝違えた」と一般の方が言っているのです。

 

寝違える原因

寝方や枕は寝違えの原因ではなく、きっかけ

寝違える原因とは一体何でしょう?寝違えは朝起きたときに発症することが多いので、寝方が悪かったから、枕が合わないからと考えるかもしれません。しかし寝方や枕は、首の痛みが出るきっかけに過ぎず、もともと首の状態が悪くなっていたから寝違えたのです。それでは首の悪い状態とはどういうことでしょうか。

肩こりで首の状態が悪くなっていると寝違えに

寝違えを発症する人の大半は、もともと肩こりや首こりがあります。肩こりは、首肩の筋肉が異常に収縮し続けて凝っている状態です。首肩の筋肉が収縮すると、首の骨同士にギュッと圧迫する力が加わることになります。つまり、肩こりは、頚椎の関節や椎間板などに過剰な負担がかかり続けている状態なのです。するとやがて、関節や椎間板が変形したり、椎間板に亀裂が入ったりして痛みが起きるようになります。これが首の悪い状態です。
また、肩こりや首こりは無自覚なことも多く、首の状態が悪くなっていることに気付きにくいのです。

寝違えにつながる肩こりの原因は?

肩こりが首を悪くして寝違える、ということはお分かりいただけたかもしれません。すると、肩こりの原因が寝違えの本当の原因と言えます。そこで肩こりの2つの主な原因をご説明しましょう。

姿勢が悪いと肩こりに

首、肩こりのデスクワーカー

肩こりの原因の一つは悪い姿勢です。

たとえば、デスクワークやスマホ操作時に、頭が前に突き出ていたり、頭を下に垂れていたりすると何が起きるでしょうか。

5キロもある頭を支えようと首や肩の筋肉が強く収縮することになります。

その筋肉の収縮が肩こりそのものです。

 

ストレスで肩こりに

ストレスによる肩こり

ストレスが多い場面では、無意識に肩がこりますよね。

例えば飲み会で嫌いな友達や上司の隣になってしまったときなどです。

ストレスは立派な肩こりの原因、つまり寝違えの原因になります。

そのほかに多いストレスは、忙しすぎる、夫婦(家族)関係が悪い、仕事がうまくいかない、子育て、予定外のことが起きる、通勤などです。

どれか思い当りませんか?

 

寝違えの原因のまとめ

まとめると、姿勢が悪く、ストレス一杯の生活を送っていると(無自覚でも)肩がこり、やがて、寝る姿勢が悪い、枕が合わないなど、ちょっとしたことがきっかけになり、寝違えを発症してしまうのです。

寝違えの痛みは何日続く?

寝違えた人は、何日くらい痛みが続くのか不安になるものです。そのため、軽症から重症まで痛みが治るまでの日数を示します。個人差があり、下記はあくまで目安です。

軽症

首が痛いけれど、ある程度動かせるような場合です。2~3日で痛みがだいたい治まります。

中等症

首が痛くてあまり動かせないけれど、横になれば痛みは楽になる場合です。発症当初は首の痛みが激しいかもしれませんが、徐々に痛みが軽くなり、1週間位で痛みが治まります。

重症

重症では首が痛くて全く動かせず、動かそうとすれば激痛が走ります。横になっても痛みが楽になる位置が限られます。重症では痛みが無くなるまでに2週間からそれ以上かかります。痛みが慢性化してしまう人もいます。

寝違えの当院の治療法

寝違えに当院では手で行う専門的なリハビリ治療を行っています。お困りの方はぜひご来院ください。

寝違えた人の自分でできる治し方

寝違えた人は首の痛みを早く解消したいですよね。そこで、自分でできるおすすめの解消法をお伝えします。

寝違えにまずアイスパック

激しい痛みには、アイスパックで冷やすといいでしょう。冷やすと、神経の伝達が弱まるため痛みが楽になります。熱が出たときにおでこに貼る冷え〇〇では、十分に冷えないので、やはりアイスパックや氷嚢などを使いましょう。

お風呂やホッカイロで温めて首を緩める

 

入浴で肩こり解消

お風呂で首を温めるのも効果的です。

固まった首の筋肉が緩み楽になることがあります。

お風呂のお湯はぬるめのほうが筋肉は緩みやすいでしょう。

あるいは、ホッカイロで首を温めるのも試す価値はあります。

 

ロキソニンなど痛み止めを飲む

寝違えの痛み止め薬

とにかくつらい痛みを何とかしたい人は、市販の痛み止めのロキソニンを飲むのもよいでしょう。

ただ胃が弱い人にはお勧めしません。

アセトアミノフェンという鎮痛剤が入っている市販薬、例えばタイレノールも効果が期待できます。

 

寝違えに湿布も有効

湿布も立派な痛み止め(鎮痛剤)の成分が入った薬ですので、湿布を首に貼るのもよいでしょう。温湿布でも冷湿布でも効果に差は無いのでどちらでも構いません。

寝違えを解消するストレッチ体操

ストレッチ体操は、寝違えでも軽症の人は行ってみてもよいでしょう。ただ、強い痛みがあるときには行えないため、ストレッチ体操は、どちらかというと寝違えが治まったあとの予防に向いています。

・ストレッチ体操の方法
一つ目は、首を斜め前に倒し、首の後ろや横を伸ばします。二つ目は、逆に斜め後ろへ首を倒して首の前側を伸ばします。それぞれ20秒くらい保持し、2、3回繰り返します。痛みが強くならないように注意しながら行いましょう。

寝違えたときの寝方の工夫

・仰向けの寝方での工夫

仰向けで寝るときは、枕の高さを工夫することが大切です。次の項目でご説明します。

・横向きの寝方での工夫

横向きの寝方では、肩幅がありますので、枕を高めにして首が横に傾かないようにします。そして寝違えでも、下を向くと首が痛い人は、横向きに寝ながら首を反らし気味にすると楽な場合が多いです。反対に、上を向くと首が痛い人は、首を下に曲げ気味にして寝ると楽に寝られるケースが多いです。ぜひ試してみて下さい。

寝違えたときに枕の高さの工夫

寝違えた時の枕

寝違えたときには枕の高さを工夫すると楽になります。タイプ別の対処法をお伝えします。

・低めの枕を使っているなら
もし低めの枕を使っているようなら、枕を今より若干高くしてみるとよいでしょう。

・上を向くと首が痛い人は
上を向く、あるいは首を反らすと首が痛い場合も枕を高くするとよいでしょう。

・下を向くと首が痛い人は
下を向く、あるいは首を下に曲げると首が痛い寝違えの人は、枕を低くするとよいでしょう。

首枕は使っていい?

首の部分が盛り上がり、首が反るようないわゆる首枕は、固まっている首を無理に反らすことになるので、寝違えで痛みがある人にはお勧めしません。

 

寝違えたら病院の何科に行く?

寝違えの専門科

寝違えたら、病院の何科へ行けばよいかと迷うかもしれません。

寝違えの治療経験が最も豊富なのは整形外科です。

ペインクリニックもいいでしょう。

整形外科が近くに無ければ内科や外科のかかりつけの先生に相談してみましょう。

病院で何の検査をする?

寝違えは、問診と診察だけで診断を充分に行えますが、多くの場合、病院の整形外科に行くとレントゲンを撮って頚椎の状態を確認します。頚椎の変形がある、頚椎同士の間隔が狭くなっている、頚椎の配列が真っ直ぐになっているストレートネックがある、などと説明されるでしょう。余談ですが、レントゲンを撮ったからといって治療法が変わることはほとんどありません。ですから実は、レントゲンは必須の検査ではありません。しかし、いろいろな事情のためレントゲンを行っています。
MRIは、重篤な病気が疑われた場合に行うものなので、寝違えでMRIを勧められたら、理由をしっかり説明してもらいましょう。

病院でどんな治療をしてくれる?

薬を処方する医者

整形外科では一般にロキソニンなどの痛み止めが処方され、また、湿布も同時に出されることが多いです。

ミオナールなどの筋弛緩薬も処方されることがあります。

痛みが酷いときや、首が回らないときに、頚椎カラーを処方される場合もあります。寝違えに対してはあまりリハビリを行いません。

例えば牽引をすると、かえって痛みが悪化しかねないからです。
薬や頚椎カラーは対症療法ですので、痛みがよくなっても首の状態が改善するわけではありません。

 

子供も寝違える時代に

寝違えの子供

寝違えは、通常、忙しく働いている人に多くみられます。

そのため、リタイヤした高齢者には多くありません。

 

最近は、子供も寝違えるようになりました。

スマホやタブレット、携帯のゲーム機を長時間使っていることや、悪い姿勢で受験勉強をすること、さらに受験のストレスも子供の寝違えの原因になっていると思われます。

 

背中の寝違え

背中の寝違え

朝、目を覚ましたら背中が痛い、動かすと背中に激痛が走る、背中が固まってしまった、背中が痛くて起き上がれないなどという寝違えの背中版のような状態もあります。特に肩甲骨のあたりの背中に痛みが起こることが多いです。
背中の痛みを起こす寝違えは、首の寝違えとほぼ同じメカニズムで発症し、場所が少し異なるだけです。頚椎症ではなく、胸椎症という病名になります。背中の寝違えは、ぎっくり腰ならぬ、ぎっくり背中とも言える状態です。

寝違えを起こす病気

寝違えは、急に発症した首の痛みのことをいい、病名ではありません。ここでは寝違えを起こす病気や関連する病気についてご説明します。

頚椎症

頚椎症

頚椎症とは、頚椎や椎間板、椎間関節などが傷み、首に痛みなどの症状を生じる病気のことを指します。寝違えの医学的な病名は頚椎症です。

頚椎症にはいくつかの種類があります。

頚椎に加齢による変形がある場合は変形性頚椎症といいます。

頚椎の変形などで神経が圧迫され、腕や手に痛み・しびれを生じる頚椎症性神経根症という病気も頚椎症の一種です。

頚椎の中を通る脊髄が圧迫されて、手足のしびれ、脱力などの重い症状を伴う頚椎症性脊髄症という病気もあります。

 

【関連ページ】
頚椎症
頚椎症の症状、原因、検査、治療などの解説

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎は7個の椎骨からできていますが、椎骨の間には椎間板と呼ばれる円盤状の軟骨があります。軟骨から成る椎間板は頭の重さを椎骨とともに支えています。加齢による椎間板の劣化、姿勢の悪さによる椎間板への負荷の増加などによって、椎間板が変形、膨隆した状態を頚椎椎間板ヘルニアといいます。椎間板が変形、膨隆する過程で炎症が生じると、頚椎椎間板ヘルニアは首に強い痛みを生じることがあります。頚椎椎間板ヘルニアは、寝違えの原因の病気の一つといえます。
また、椎間板が膨隆し、頚椎から出て腕に伸びる神経を圧迫すると、首から腕や手にかけて痛み、しびれを引き起こします。

【関連ページ】
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアの症状、原因、検査、治療などの解説

ストレートネック

正常な頚椎(首の骨)は緩やかに前にカーブしています。頚椎の下部は前に向かってカーブし、上部は後ろへ向かってカーブすることで、頭は結局、体の真上に位置しています。頭が体の真上にあるので、首や肩の筋肉は必要最小限の力で頭の重さを支えることができます。
悪い姿勢では、頭が前に突き出るので、頚椎の上部の後ろへ向かうカーブが無くなります。すると、頚椎の上部も下部も前へ向かうことになり、頚椎のカーブが失われ、真っ直ぐになります。その状態をストレートネックといいます。
ストレートネックは長時間に亘って悪い姿勢でパソコン作業をすることや、スマートフォンを見る姿勢によって生じます。ストレートネックの状態では、頭の位置が体の真上ではなくて、体よりも斜め前方に位置してしまい、首が頭を支えるのに大きな力が必要になります。頭を支える強い力が、首の関節や椎間板に負担をかけます。その結果、ストレートネックがあると、慢性的な肩こりや首の痛み、寝違えに悩まされやすくなります。

【関連ページ】
ストレートネック
ストレートネックの症状、原因、検査、治療などの解説