【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2025年6月13日 公開日:2019年11月6日

首が痛いと日常生活に支障をきたすことがあります。首の痛みは、様々な原因で引き起こされる可能性があり、適切な対処が必要です。首が痛いという症状は、上を向いたり下を向いたりする際に感じることが多く、時には頭痛を伴うこともあります。また、首の痛みは寝違えや背中の痛みにつながることもあります。

首が痛い時の対処法としては、適切な枕の選択や寝方の工夫が重要です。また、首の痛みを和らげるストレッチも効果的です。しかし、症状が長引く場合や急激な痛みがある場合は、医療機関での診察を受けることをお勧めします。

首の痛みの予防には、日常的な姿勢の改善が重要です。特に、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、定期的に首を動かしたり、ストレッチを行ったりすることで、首への負担を軽減できます。

首が痛い症状は決して軽視せず、適切な対処と予防を心がけることが大切です。本記事では、首の痛みの原因や症状、効果的な対処法について詳しく解説していきます。

首が痛い人はこのようにお困りではありませんか?

首が痛くて困っている方は、以下のような症状でお悩みではないでしょうか?

・上を向くと首が痛い
・下を向くと首が痛い
・頭痛もする
・よく寝違える
・背中が痛い
・枕が合わず痛い
・痛い時の寝方を知りたい
・首の痛みに効くストレッチを知りたい
・首の痛みで仕事に集中できない
・スマートフォンやパソコンの使用で首が痛くなる
・首の痛みで睡眠の質が低下している

首の痛みは日常生活に大きな影響を与える厄介な症状です。長時間のデスクワークや不適切な姿勢、ストレスなども首の痛みの原因となることがあります。首が痛いと、上を向いたり下を向いたりする動作が困難になり、日常生活に支障をきたすことがあります。また、首の痛みは頭痛や肩こり、背中の痛みにつながることもあります。

これらの症状でお悩みの方は、適切な対処法や治療法を知ることで、首の痛みを軽減し、快適な日常生活を取り戻すことができます。首の痛みの原因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

首が痛い時の症状

首の痛みは、多くの人が経験する症状です。痛みの現れ方や場所は人によって様々で、個人差があります。首の痛みは、単に不快な感覚だけでなく、日常生活に支障をきたす可能性もあります。

首の痛み方は、痛む場所や動作によって異なります。例えば、首の右側や左側といった片側だけが痛む場合もあれば、両側同時に痛むこともあります。また、後頭部のすぐ下の部分や、首の根元付近が痛むケースもあります。

動作に関連した首の痛みも様々なパターンがあります。最も多いのは、上を向いたり首を反らせたりした時に痛みを感じるケースです。この場合、首の後ろ側だけでなく、肩甲骨の間にも痛みが出ることがあります。次に多いのは、首を前に曲げた時に痛みを感じるパターンで、頭の付け根、首すじ、首の根元から背中にかけて痛みが走ることがあります。

首を左右に回したり横に倒したりした時に痛みが出る場合もあります。この場合、動かした側と同じ側が痛むことが多いですが、反対側の首や肩甲骨周辺に痛みが出ることもあります。

症状が重度になると、首を動かさなくても痛みを感じたり、首を動かせる範囲が狭くなったりすることがあります。これは、首の状態が悪化している可能性を示しています。

日常生活では、高い場所の物を取る時や、美容院や歯科医院で仰向けになった時、車をバックさせる際に振り返った時などに首の痛みを感じることが多いようです。特に注目すべきは、肉体労働よりもデスクワークなどのパソコン作業を長時間行っている人の方が、首の痛みを訴える割合が高い傾向にあることです。

首の痛みは、単なる不快感だけでなく、頭痛や肩こり、腕のしびれなど、他の症状を伴うこともあります。これらの症状が複合的に現れる場合、より深刻な問題が潜んでいる可能性があるため、医療機関での診察を検討することが重要です。

首の痛みの場所

首が痛いという症状は、痛みを感じる場所によって様々なパターンがあります。首の痛みの位置を正確に把握することは、適切な治療や対処法を選択する上でとても重要です。

首が痛い場所

首が痛い場所

片側の首の痛み

首が痛い場合、右側や左側など片側だけが痛むことがあります(写真2)。この場合、首の筋肉や関節の問題が考えられます。時には神経が関係していることもあります。

両側の首の痛み

首の両側が同時に痛む場合もあります。これは首全体に負担がかかっている可能性があり、姿勢の悪さや首の使いすぎ、つまり長年の首への負担が原因かもしれません。

後頭部付近の首の痛み

首の中でも、後頭部のすぐ下の付け根部分が痛む場合があります(写真1)。この部位の痛みは頭痛を伴うこともあり、首の痛みと頭痛が関連している可能性があります。

首の根元の痛み

首の根元(背中との境目)あたりが痛む場合もあります(写真3)。この部位の痛みは、筋肉や関節の痛みが多いのですが、肩や肩甲骨の間の背中のあたりにも痛みがあると、神経の圧迫が関係していることがあります。

首が痛い時は、痛みの場所を正確に把握し、医療機関で適切な診断を受けることが大切です。また、首の痛みの原因や対処法について理解を深めることで、効果的な予防や管理が可能になります。

 

 

動作で首が痛いパターン

首が痛い場合、様々な動作で痛みを感じることがあります。

上を向くと首が痛い

最も多いのが、上を向くと首が痛い(あるいは首を反らせたときに首が痛い)パターンです。この場合、頭の付け根、首すじ、肩甲骨の間にも痛みを伴うことがあります。

前に曲げると首が痛い

二番目に多いのが、首を前に曲げた時の痛みです。この場合、首の根元から背中にかけてズキッと痛みが起きることが多いようです。突っ張るように痛いこともあります。

右に回す、左に回すと首が痛い

首を左右に回した時に首の痛みが出るパターンもあります。この場合、回した側と同じ側の頭の付け根、首すじ、首の根元などに痛みが出ますが、反対側の首すじや首の根元に痛みが出ることもあります。

横に倒すと首が痛い

横に倒したりした時に首の痛みが出るパターンもあります。この場合、倒した側と同じ側の首が痛むことが多いものの、反対側の首に痛みが出ることもあります。

首が痛い人の中には、痛みで首を動かせる範囲が狭くなる場合や、ひどくなると首を動かさなくても痛い場合もあります。

日常生活では高い場所の物をとるとき、美容院、歯科医院などで仰向けになった時、車をバックさせる時など振り返った時に首の痛みを感じることが多いようです。

また、興味深いことに、肉体労働よりもパソコン作業などデスクワークを長時間行っている人の方が、首が痛いと訴える割合が多い傾向があります。これは、長時間同じ姿勢を保つことが首に負担をかけるためと考えられます。

首が痛い時は、無理に動かさずに、痛みの少ない範囲で首を動かすことが大切です。また、首の痛みが続く場合は、専門医への相談を検討することをおすすめします。

 

首の痛みの原因

首の痛みの原因は大きく分けて、関節、椎間板、筋肉、神経の4つに由来します。これらの組織に負担がかかることで、首が痛い症状が引き起こされます。
首の痛みは、突然の動きや事故、スポーツ中のトラブルなどの急性の要因で発生することもありますが、多くの場合は長期間にわたる不良姿勢や反復動作などの慢性的な要因が関与しています。特に、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けることは、首が痛い原因となりやすいです。
また、首は5キロほどもある頭部を支える重要な役割を担っているため、姿勢が悪いと通常の5倍もの負担がかかります。特に、頭が前に突き出たような姿勢(いわゆる「ストレートネック」)は、首への負担を著しく増加させ、首が痛い症状を引き起こす主な要因となります。
さらに、精神的なストレスや睡眠不足、冷えなどが自律神経を乱して、首の痛みを悪化させる要因となります。これらの要因が重なることで、首の組織に慢性的な負担がかかり、痛みが持続または悪化する可能性があります。
したがって、首の痛みを改善し予防するためには、姿勢の改善や適度な運動、ストレス管理など、日常生活全体を見直すことが重要です。また、痛みが長期化する場合は、専門医の診察を受けることをお勧めします。
参考文献:Assessment of stresses in the cervical spine caused by posture and position of the head

 

関節が原因の場合

首が痛い原因の一つに、頚椎の関節(椎間関節という)の問題があります。特定の頚椎の椎間関節に過度な負担がかかることで、痛みが引き起こされます。特に第5頚椎と第6頚椎の間の椎間関節は、最も負担がかかりやすい部位であり、変形のリスクが高い箇所です。
この椎間関節への負担は、不適切な姿勢や長時間のデスクワークなどが原因となることが多く、首の痛みにつながります。例えば、前かがみの姿勢を長時間続けると、頚椎の椎間関節に不自然な力がかかり、痛みを引き起こす可能性があります。

椎間板が原因の場合

椎間板は、首の骨(頚椎)の椎骨の間にある軟骨組織です。この椎間板に過度な負担がかかると、首が痛くなることがあります。特定の椎間板に長年にわたって負荷が集中すると、椎間板に亀裂が入り、痛みの原因となります。
長時間のデスクワークや不適切な姿勢は、首の椎間板に悪影響を与える可能性があります。首が痛い場合、椎間板の問題が原因である可能性を考慮する必要があります。
椎間板由来の首の痛みは、動作によって症状が変化することがあります。例えば、首を前に曲げたり後ろに反らしたりすると痛みが増強することがあります。また、椎間板の問題は神経を圧迫することもあり、首だけでなく腕や手にしびれや痛みを感じる場合もあります。

筋肉が原因の場合

首が痛いという症状の中でも、筋肉由来の痛みは比較的多く見られます。特に、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、現代的な生活習慣が首の筋肉に負担をかけやすい傾向があります。首が痛い時には、首周りの筋肉の緊張や硬直が関与していることが多いため、適切なストレッチや首の運動を行うことで、症状の改善や予防に効果が期待できます
急な首の運動や交通事故、スポーツ中のトラブルなどによって筋肉が急激に引き伸ばされて、いわば首の筋肉の肉離れが生じても首の痛みが起きます。そのような状態には患部を安静にすることが初期治療として勧められます。

神経が原因の場合

神経が首の痛みの原因である場合、関節や椎間板の変形などによって神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されることで症状が現れます。首だけでなく肩、肩甲骨周囲や腕にも痛みやしびれが起きるのが特徴です。首を反らしながら痛い側に傾けることによって症状が強くなります。

首の痛みの本当の原因は?

首の痛みを発するのは、首にある関節、椎間板、筋肉、神経のいずれかです。一方、そもそも首は5キロほどもある重たい頭を支えていて、関節、椎間板、筋肉等に大きな負担がかかっています。それに加え、頭が前に突き出たような悪い姿勢をとると、2~3倍の負担が首にかかります。姿勢が悪い人は、常に姿勢が悪いものです。つまり、悪い姿勢を長時間続けて首に負担をかけることが、首の痛みの本当の原因と言えるのです。

首の痛みの病名は?

首の痛みがあり、関節、椎間板、筋肉のいずれかの組織から痛みが発生している場合、病名は頚椎症です。

急に発症した首の痛みを寝違えと言いますが、寝違えも関節、椎間板、筋肉から痛みが出ているので、病名は頚椎症です。

頚椎の本来のカーブが無くなったストレートネックも首の痛みが出れば、病名は頚椎症です。

首が痛いという症状に加え、腕のしびれや痛み、手のしびれがある場合は、頚椎症性神経根症頚椎椎間板ヘルニアが疑われます。

参考文献:首が痛い

首が痛い人への当院の治療法

当院では、首の痛みを専門的に治療しています。院長は首の痛みに関する著書を数冊出版しています。

首が痛い時のお勧めの対処法

首が痛い時の寝方と枕の高さ

寝違えて首が痛い場合、痛くて寝られないこともあります。そんなときの寝方の工夫をお伝えします。
仰向けの寝方では、上を向くと首が痛い人は枕を高めにして寝ます。逆に、下を向くと首が痛い人は枕を低めにして寝ます。
横向きの寝方では、上を向くと首が痛い人は、下を向くようにして寝ます。逆に、下を向くと首が痛い人は、上を向くようにして寝ます。
うつぶせ寝は首の痛みがある人にはお勧めしません。

首が痛い人向けのストレッチ

首が痛い人は、首の周りの筋肉が固まっているので、それをストレッチすると首の痛みが楽になったり、再発の予防になったりします。首の前側にある斜角筋、首の後ろ側にある後頭下筋群、上部僧帽筋、肩甲挙筋などが固まりやすい筋肉です。
痛みが出ない範囲で、上を向きながら首の前側を伸ばすストレッチや、反対に、下を向きながら首の後ろ側を伸ばすストレッチをするとよいでしょう。

首が痛いなら市販のロキソニンを内服する

首が痛いときには、手軽に薬局で入手できるロキソニンを買って内服するのもよいでしょう。

病院で首の痛みによく処方する薬ですし、成分量も処方薬と変わりません。
また、ロキソニンが効かないときに代わりのお薬があります。アセトアミノフェンが主成分のタイレノールという鎮痛薬です。薬局で買えます。
一般に、湿布より内服薬のほうが鎮痛効果は高いと考えられます。

ただし、ロキソニンのような消炎鎮痛薬は、副作用で胃が荒れやすいので、連用は避けましょう。また、アレルギーがある人は服用しないで下さい。

湿布を首の痛みに使ってみる

首の痛みに薬局でも買える湿布を使ってみるといいでしょう。薬局で買える湿布は、消炎鎮痛薬というれっきとしたお薬で、冷やしたり、温めたりする効果を期待している訳ではありません。首が痛い時には病院でも湿布を処方しますし、薬局の湿布も同じような成分が含まれていますので、市販の湿布で十分です。

首が痛い人の再発予防の姿勢とは

首の痛みは不良姿勢が深く関係しているため、姿勢の改善が再発予防に特に重要です。座っているときの姿勢がもっとも崩れやすく、楽によい姿勢をとる方法を身に付けることが大切です。
一番のポイントは、椅子に深めに座り、背筋を伸ばしたまま背もたれに寄りかかることです。背もたれに寄りかかることに抵抗のある人がいますが、よい姿勢を長時間にわたって保つには、絶対的に必要なことです。これは簡単で有効なよい姿勢の取り方ですので、ぜひ気を付けてみて下さい。

首が痛い時に病院の何科に行く?

上を向くと首が痛いなど、首の痛みを診てもらうには、病院の何科にかかればよいのでしょうか。

筋肉・骨格系のスペシャリストは、何といっても整形外科です。首を動かして痛い時は整形外科を受診しましょう。

動かさなくても首が痛い場合は、内臓の病気の可能性があるので、内科の受診を考えましょう。

また、内科の病気で首の痛みが出る場合はたいてい熱があったり、高血圧があったりします。

参考文献:腰が痛い! 首が痛い! 手足がしびれる! 整形外科医の立場から

首の痛みで病院へ行くと

首が痛い時に病院へ行くと、多くの場合レントゲンを撮って、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア、あるいはストレートネックと診断され、加齢によって椎間板や骨が変形することが原因などと説明されます。しかし、なぜ変形したのか、どう予防したらよいのかはあまり説明してもらえません。

病院での治療は、ロキソニンなどの痛み止めの薬や湿布を出されるだけのことがあります。よい病院へ行けば、マッサージをしてくれたり、ストレッチを処方してくれたりします。薬や湿布は症状を緩和しても、根本的な治療ではないので、何らかの再発予防の対処法を行いましょう。