頚椎症性神経根症とは

頚椎は5キロ近い重さの頭を支え続けています。中高年になると、長年にわたり頭を支えた頚椎は変形し、骨棘(骨のとげ)を形成します。そして骨棘が大きくなると、頚椎から腕に伸びていく神経の根っこの部分、すなわち神経根を圧迫し、肩から腕の痛み、肩甲骨付近の痛み、腋の下の痛み、腕や手のしびれ、指のしびれなどの症状を起こすのが頚椎症性神経根症です。

頚椎症性神経根症は、首の痛みを伴うこともあります。発症する前に長年、首こりや肩こりを患っていたり、寝違えを繰り返したりしている人が多くいます。また、悪化すると、握力が低下する、腕や手の皮膚の感覚が鈍くなるなどの症状も現れます。

頚椎症性神経根症の原因

不良姿勢で頚椎に何倍もの負荷がかかる

なぜ骨棘が大きくなり、頚椎症性神経根症になってしまう人がいるのでしょうか。頭が重たい人がなりやすいのでしょうか。それもあるとは思われますが、より重要な原因は、不良姿勢です。姿勢が悪く、猫背で頭が前に突き出た姿勢では、頚椎が30度前に傾くと、頚椎にかかる負担が4倍にもなると言われています※。姿勢が良い人に比べて何倍もの負荷が頸椎にかかり続ければ、骨棘が大きく成長してしまうのもお分かりになるでしょう。

※Hansraj K.K.: Assessment of Stresses in the Cervical Spine Caused by Posture and Position of the Head. Surg Technol Int. 2014 Nov;25:277-9.

慢性的な筋肉の収縮が骨棘の原因に

頭が前に突き出た悪い姿勢をしているときには、頭が垂れ下がらないように、頚椎周囲の筋肉が固く収縮し、頭を支えています。不良姿勢が長く続くと、首の筋肉はずっと固く収縮していることになります。その結果、首の筋肉は緩むことができなくなるのです。例え横になり、寝た姿勢になっても首の筋肉の収縮は、持続してしまうのです。

つまり姿勢の悪い人は、24時間、365日にわたり筋肉の慢性的な収縮で頚椎が圧迫され、大きな骨棘を形成してしまうのです。

慢性的な筋肉の収縮は、首こりや肩こりとして自覚されていることが多いものです。しかし、たとえ筋肉が固く収縮していても、全く自覚していない人もいます。肩こりの自覚が無い人が美容院や床屋に行き、肩が凝っていますねと言われて初めて筋肉の固さに気付かされることがあります。

筋肉の収縮が椎骨の隙間を狭めて神経根を圧迫

前述のように、骨棘が大きくなって神経根の通り道が狭くなることが頚椎症性神経根症の一因です。それに加え、慢性的な頚椎周囲の筋肉の収縮が次のようなことを起こし、もう一つの原因となります。

首の筋肉が収縮すると、椎骨同士の隙間が狭まります。神経根は椎骨同士の隙間を通っていますが、すでに骨棘で通り道が狭い上に、首の筋肉の収縮が加わり、神経根が圧迫され、頚椎症性神経根症の症状が出ることになります。

頚椎症性神経根症が多い年齢は?

頚椎症性神経根症は、40代、50代が最も多い年齢になります。頚椎症性神経根症は、主に頚椎の加齢変化によるものなので、もちろん60代、70代での発症も多いです。しかし、ストレスによる頚椎周囲の筋肉の固さも大きく影響しているため、60代、70代といった退職後の世代よりもストレスの多い現役世代の40代、50代により多いと考えられます。
最近は、スマホ首といい、スマホ使用時に頭を垂れた姿勢で首を悪くする人が増え、20代、30代での発症も増加している印象があります。

頚椎症性神経根症とヘルニアの違い

頚椎症性神経根症は、骨棘が神経根を圧迫して、腕や手に痛みやしびれを起こしますが、頚椎椎間板ヘルニアは、軟骨である椎間板が加齢によって張り出して、神経根を圧迫して症状を起こします。言い換えると、骨が変形しやすい人が頚椎症性神経根症になり、椎間板が傷んで出っ張りやすい人が頚椎椎間板ヘルニアになるわけです。

頚椎症性神経根症と頚椎椎間板ヘルニアでは、神経根の圧迫のされ方に大きな違いがありません。なぜなら、骨棘とヘルニア部分は隣同士だからです。その結果、現れる症状も同じになるのです。ですから、症状や診察から頚椎症性神経根症と頚椎椎間板ヘルニアを見分けることはほぼ不可能です。MRI画像でしか区別がつきません。さらに、治療法も手術以外は同じなので、手術を受けるのでなければ、両者を区別することに意味はありません。

頚椎症性神経根症の簡易な検査・診断法

神経根が通る頚椎の隙間は、首を後ろに反らすと狭くなり、首を前に曲げると広がります。頚椎症性神経根症の人は、首を後ろに反らすと腕や手にしびれ、痛みなどの症状が現れます。反らしただけでは症状が出ない人もいますが、首を後ろに反らしながら、右手にしびれがある人は、右に首を倒すと、症状が誘発されます。左手にしびれがあるなら、首を反らしながら左へ倒します。これはスパークリングテストといい、簡易な検査ですがとてもよい診断法です。

頚椎症性神経根症の完治を目指す当院のリハビリ治療

前述のように、頚椎症性神経根症は、不良姿勢とそれによる慢性的な頚椎周囲の筋肉の収縮、すなわち首こりが原因です。そこで、当院のリハビリは、不良姿勢で猫背に固まっている背骨を整体で矯正をすること、首の筋肉を緩める治療をすることの2つがメインの施術となっています。

その2つは、頚椎症性神経根症の治療の両輪と言えるものです。姿勢を治さないと、骨棘の成長を抑えることもできず、また、筋肉の収縮も抑えることができません。そして、筋肉を緩めないと神経根の圧迫を取り除くことができません。熟練の技で背骨を矯正し、様々な整体の技術を駆使して首の筋肉を緩め、神経を回復させる治療を当院では行っています。

治療で首の筋肉を緩めた上で、次に説明する院長が考案したストレッチで頚椎の隙間を広げます。するとさらに効果が上がり、完治する人も少なくありません。

頚椎症性神経根症に効くストレッチ体操

ここでは、院長が考案した頚椎症性神経根症に効果のある「首伸ばし」というストレッチ体操をご紹介します。院長の著書「自分で治す!頚椎症」(洋泉社刊)の一部を引用して解説します。

首伸ばしというストレッチ体操は、頭の重さを利用し、頚椎を伸ばしながら前に曲げる体操です。立ったまま手を後頭部に当てて頭を下げ、首を伸ばしつつ頭を股の間に押し込むようにします。30秒位その姿勢を維持します。休憩を取りながら3回繰り返し、1日に何度か行います。

なお、高血圧や脳神経に持病のある人、体操でふらつく人などは行わないでください。また、猫背を治さずに、あるいは首の筋肉の固さを治さずに首伸ばしをしても、首伸ばしの本来の効果は十分に出ないことがあります。

頚椎症性神経根症が治らない、再発するのはなぜ?

頚椎症性神経根症が治らないのはなぜ?

頚椎症性神経根症が治らない理由は2つあります。1つ目は姿勢が悪いままであること、つまり猫背が続いていること、2つ目は首の筋肉が固いままであることです。姿勢が悪く、猫背のままだと頚椎への負荷が大きく、骨棘が成長し続けてしまいます。そして、頭を支えるために首の筋肉が固く緊張し続け、神経根が圧迫されたままになります。つまり、この2つを解消していないから頚椎症性神経根症が治らないのです。

頚椎症性神経根症が再発する理由は?

・痛み止めで姿勢の悪さや筋肉の固さは変わらない

頚椎症性神経根症の患者さんが、病院で痛み止めの薬をもらって服用しただけで痛みやしびれが無くなることがあります。それは、神経根への圧迫は続きながらも、神経根に生じていた炎症が収束し、さらに神経根が圧迫に慣れて元気を取り戻したため、症状が無くなったのです。しかし、姿勢の悪さや首の筋肉の固さは治っていないので、骨棘がさらに大きく成長すると頚椎症性神経根症の再発が起きてしまいます。

 

・症状が無くなっても治っていない

痛み止めの薬を飲んで症状が無くなると「治った」と思う人がいますが、そうではありません。例えば、高血圧や糖尿病の初期には、血圧や血糖値が高めでも症状はありません。しかし、健康診断を受けると異常を指摘され、病院で治療を受けるよう指示されます。なぜなら高血圧や高血糖が続けば、脳梗塞や心筋梗塞、あるいは、網膜症や腎不全などの重大な病気につながるからです。たとえ症状が無くても病気の状態であることがあるのです。

 

・再発やより重症な頚椎症性脊髄症の発症も

内科的な病気だと、症状が無いけれど治っていない病気があるのを理解しやすいと思います。頚椎症性神経根症も、鎮痛剤などの薬で症状が無くなっても、姿勢の悪さや首の筋肉の固さは変わりませんので、治ったのではなく、症状がおさまった状態に過ぎないのです。ですからいずれ頚椎症性神経根症が再発したり、骨棘が大きく成長し、はるかに重症な頚椎症性脊髄症を発症したりすることがあるのです。姿勢の悪さや首の筋肉の固さを治す治療がいかに大切かお分かりになると思います。

頚椎症性神経根症に良い枕とは?

頚椎症性神経根症に良い枕とは、低い枕でしょうか。高い枕でしょうか。あるいは首を持ち上げるような首枕でしょうか。

頚椎症性神経根症では、首を反らすと神経根の通る頚椎の隙間が狭くなります。仰向けで低い枕や首枕は、首が反った形になるため良くありません。逆に高い枕を使うと、首が前に曲がった形になり、頚椎の隙間が広がります。つまり、頚椎症性神経根症に良い枕とは、高い枕です。ただし、すべての頚椎症性神経根症の方に有効であるとは限りません。

頚椎症性神経根症では病院の何科にかかる?

頚椎症性神経根症の診断や治療を最も多く行っているのは何科でしょうか?それは整形外科です。腕の痛み、手のしびれなどで患者さんがまず行くのは病院の整形外科が多いからです。ごく稀ですが、頚椎症性神経根症が治らない人には手術を行いますが、整形外科が最も多く手術を手掛けています。

一部の脳神経外科でも頚椎症性神経根症の手術を行っていますので、脳神経外科も選択肢の一つではあります。脳神経外科はリハビリを含めた手術以外の総合的な治療に長けてないこともあるので注意が必要です。また、神経が専門の神経内科でも頚椎症性神経根症を診てくれるでしょう。激しい症状がある場合は、後述するようにペインクリニックでブロック注射を受けるのも選択肢です。ただやはり最初に行くのは整形外科がお勧めです。

頚椎症性神経根症の病院での治療法は?

頚椎症性神経根症の薬の治療

頚椎症性神経根症に効く薬として病院でよく処方されるのが、ロキソニンなどの痛み止めの薬です。首の筋肉を緩めるためにミオナールなどの筋弛緩薬を使うことも多いです。ロキソニンなどの痛み止めが効かない場合、最近はリリカという強い鎮痛剤を使うことが多くなっています。

頚椎症性神経根症の注射の治療

一部の整形外科やペインクリニックでは、頚椎症性神経根症の激しい痛みに対し、神経根ブロック注射や星状神経節ブロック注射を行うことがあります。神経根ブロック注射は、キシロカインなどの麻酔薬を神経根の周囲にばらまき、神経を麻痺させ痛みの伝達を遮断します。麻酔薬の効果が切れると痛みがぶり返すことが多い治療法です。

星状神経節ブロックは、首を通る交感神経を麻痺させて、筋肉を緩め、腕の血流を増やして症状を緩和させる治療法です。両方の注射ともに、かなり危険な割に、治ることは多くないので、激しい症状に困った人が受ける治療法です。

頚椎症性神経根症の病院でのリハビリ

頚椎症性神経根症に病院で行うリハビリで最も一般的なのが、頚椎の牽引です。しかし、整形外科で使われているほとんどの牽引の器械は、首をまっすぐ上に引っ張るだけのものです。頚椎はまっすぐに引っ張っても隙間が広がるのはごくわずかに過ぎません。ですから、頚椎牽引で効果が出るのは、軽症のごく一部の人に限られます。

整形外科の病院では首肩のマッサージをしたり、ホットパックで温めることをしたりするかもしれません。また、干渉波などのリハビリも行われています。しかし、頚椎症性脊髄症ではそれらのリハビリにあまり効果は期待できません。