【執筆者】竹谷内医院院長 整形外科医 竹谷内 康修 

東京慈恵会医科大学卒業後、福島県立医科大学整形外科に入局。その後、米国へ留学しナショナル健康科学大学を卒業。手で行うリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書は「頸椎症の名医が教える竹谷内式首トレ」(徳間書店)、「自分で治す脊柱管狭窄症」(洋泉社)など十数冊ある。

最終更新日:2019年11月6日 公開日:2019年11月6日 

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頚椎や周囲の組織に異常があり、首に痛みなどの症状が起きた場合に頚椎症と診断します。頚椎症は、頚部脊椎症や変形性頚椎症と呼ばれることもあります。症状が首の周囲だけの場合は単に頚椎症といいますが、頚椎を通る神経が圧迫されて、腕や手足に痛みやしびれなどが出ると、頚椎症のなかでも特に頚椎症性神経根症や頚椎症性脊髄症という詳しい診断名がつけられます。

院長の著書「自分で治す!頸椎症」(洋泉社刊)で頚椎症とは、および治療法を詳しく解説しています。

自分で治す頸椎症 洋泉社刊 竹谷内康修著

頚椎症の症状

頚椎症は様々な症状を引き起こします。首の痛み、張り、違和感、重苦感、肩こり、肩の痛み、肩甲骨付近の痛み、背中の痛み、頭痛、めまいなど多彩な症状を示します。頚椎症性神経根症では、肩の痛み、腕の痛みとしびれ、手のしびれが主な症状です。頚椎症性脊髄症では、腕のしびれ、手や足のしびれに始まり、進行すると、ボタンを上手くはめられない、お箸を使いにくい、字が書きにくい、歩くと足がつっぱる、足に力が入らないといった症状や、さらに頻尿、残尿感、便秘などの膀胱直腸障害の症状も出ます。

頚椎症の検査

頚椎症の検査には、痛い所などを調べる触診、首を動かす関節可動域検査、頚椎で神経が押されているかを確認するSpurling test、Jackon test(スパーリングテスト、ジャクソンテスト)、レントゲンやMRI等の画像検査があります。当院では特に触診を重視していて、頚椎周囲の筋肉や関節の状態を詳細に把握し、原因の診断に役立てています。 レントゲンやMRIでみられる頚椎症の所見は、健常な頚椎にあるゆるやかなカーブが無くなって直線化するストレートネック、椎骨の変形、骨棘(骨のとげ)、靭帯の肥厚、椎間板の膨隆、椎間板が薄くなって椎骨同士の間が狭くなる、椎間孔や脊柱管の狭小化などです。 頚椎症性神経根症や頚椎症性脊髄症では、MRIで神経の圧迫部位が分かるので、MRIは有用な検査といえます。その一方、頚椎症で行われているレントゲン検査では、どこが症状の原因かは基本的に全く分かりません。たとえばレントゲンで骨棘が見られても、骨棘が痛みを起こしているとは限らないため、痛みの原因を特定できないのです。 そこで当院では、頚椎症には基本的にレントゲンなど画像検査は必要ないと考えています。頚椎症性神経根症や頚椎症性脊髄症の方には、必要に応じてMRIを提携機関で撮影しています。

頚椎症の原因

頚椎症の原因は、医学的には加齢変化とされていて、中高年の病気と考えられてきました。しかし、最近では20代で首が痛くなる人も珍しくありません。つまり頚椎症は単なる加齢変化だけで起きるのではないのです。近年、パソコンやスマートフォンなどの普及により、猫背やうつむいた悪い姿勢を長時間続けることが多くなりました。重たい頭を支えるため、頚椎には悪い姿勢によって強い負荷がかかり続けています。姿勢が悪いと頚椎にかかる負荷は倍増し、その負荷に耐え切れず、首に痛みなどの症状が現れるというのが頚椎症の原因です。

頚椎症性神経根症とは

頚椎症性神経根症とは、頚椎の変形、椎間板の膨隆、関節の肥厚などによって、脊髄から枝分かれして腕に向かう神経の「神経根」という部分が圧迫されて症状が起きた病態を指します。主に腕の痛み、しびれ、手指のしびれ、肩の痛み、肩甲骨周囲の痛みを起こします。多くは左右一側性に症状が起きます。悪化すると、手や腕の脱力感、握力低下、腕の筋肉の萎縮も生じます。大半の頚椎症性神経根症では、顔を上へ向けると症状が悪化します。また、仰向けで寝るとたいてい症状が悪化します。 軽症の人は消炎鎮痛薬の内服で症状が楽になりますが、薬が効かない場合は数か月から1年以上わずらい、睡眠や仕事に支障を来すことがあります。当院では頚椎症性神経根症に対し、院長オリジナルの神経除圧治療を行い、ほとんどの方が改善しています。

頚椎症性脊髄症とは

頚椎症性脊髄症とは、頚椎の変形、椎間板の膨隆、関節の肥厚などによって、脊柱管内で脊髄が圧迫されて症状が起きた病態を指します。初期症状は、手や足の末端、つまり指先にしびれが生じます。はじめは片側にしびれが出ますが、やがて両方の手や足に症状が広がります。進行すると、字を書く、ボタンをはめる、箸を使うなど手の細かい作業に支障を来します。また、徐々に手や足の力が入りにくくなります。さらに、歩行時に足が突っ張るといった症状や、頻尿、残尿、便秘などの膀胱直腸障害も出現します。 頚椎症性脊髄症が進行してしまうと手術が必要となります。初期であれば、いかにそこで進行を食い止め、手術にならないようにするかが重要になります。

頚椎症の治療

当院では、第一に頚椎や周囲の筋肉をより健康な状態にする治療を行っています。頚椎症を発症している人は、頚椎の関節の動きが悪くなっていたり、頚部の筋肉が固く緊張していたりします。そこで、関節の動きを手で調整して改善し、固まった筋肉を治療して正常な状態に戻します。すると、痛みなどの症状は消失します。頚椎症を発症する人の多くは猫背などの不良姿勢があり、首の土台となる背中や腰からバランスを崩してしまっています。そこで、頚椎の治療以外に、土台となる胸椎や腰椎の治療も合わせて行い、より高い治療効果を目指しています。 一般の整形外科で行われている頚椎症性神経根症や頚椎症性脊髄症の治療は、主に薬物療法です。薬が効かないと、頚椎牽引、電気刺激などのリハビリで治療しますが、リハビリの効果はなかなか上がらないのが現実です。それに対し、当院の治療は頚椎による神経の圧迫を直接的に減らす治療が主体になります。病院で行われている頚椎牽引の弱点を克服した院長オリジナルのストレッチで神経除圧を行い、腕の痛みや手のしびれに顕著な効果を上げています。

頚椎症と枕

頚椎症の患者さんから、「枕が悪いから首が痛くなるのですか」と質問をしばしば受けます。頚椎症の人が、首に合わない枕を使えば痛くなってしまうのは当然で、痛みを起こさない枕を使うべきではあります。しかしそれ以前に、そもそも首が悪いから痛くなるのです。もし首が健康なら、ひどく悪い枕でないかぎり、首が痛くなることはありません。健康な子供たちは、どんな枕をつかっても痛くなることはないですよね。つまり、首を健康な状態にすることが大切なのであって、首の痛みを枕のせいにすべきではないのです。枕を5個も10個も取り替えたり、高級枕を買ったりしても首が治らないと嘆いている方がときどきいますが、残念ながら無駄なことをしてしまったと言わざるをえません。 一方で、頚椎症が進行して頚椎症性神経根症になってしまった人は、枕の高さが重要になります。なぜなら、もしあお向けで低い枕で寝ると、頚椎が反り返って神経がより圧迫された状態になり、腕の痛みやしびれが悪化するからです。頚椎症性神経根症の人は、高めの枕で寝ると頚椎が反り返りにくくなって、夜を過ごしやすくなります。新しい枕を買うより、まずは使い慣れた枕で高さをタオル等で調整するとよいでしょう。ただ、頚椎症性神経根症も、首を健康にする治療のほうが、枕の高さを調整することより大切なのは言うまでもありません。