【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 整形外科医、竹谷内康修

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2021年2月22日 公開日:2019年11月6日

・痛みが辛過ぎて何とかしたい。

・病院の何科に行けばよいか分からない。

・ギックリ腰を繰り返しているけれど、予防法が分からない。

・痛みはどれくらいの期間続くのか不安。

・どんなストレッチをしたらいいか知りたい。

・冷やすのか温めるのかどちらがいい?

ぎっくり腰に多い症状

ぎっくり腰の症状で多いのは次のようなものです。

・痛くて動けない、立てない、歩けない
・歩けるけど、腰が曲がったまま伸ばせない
・体が左右にゆがんで傾いてしまった
・おじぎをしたり、腰を反らしたり、捻ったりすると痛い
・くしゃみで腰が痛い、足がしびれる
・寝るときに痛い、痛くて起き上がれない
・うつ伏せで寝られない
・寝返りで痛む
・痛くてめまいがする

ぎっくり腰とは

腰痛は、最近起きた急性腰痛と、長い間続いている慢性腰痛の二つに分けられます。ぎっくり腰とは、急性腰痛の一種で、ある動作をしたときや、ふとした瞬間から急に腰痛が出た場合を指します。腰がギクッとして痛み出す場合もそうでない場合もあります。

ぎっくり腰は、かがんだり、体をひねったり、立ち上がったりする動作やくしゃみで強い痛みを伴います。ぎっくり腰は医学的な病名ではなく、原因もさまざまです。ぎっくり腰は、欧米では魔女の一撃と呼ばれるほど、時として激しい痛みに襲われ、救急車を呼んで入院するケースもあります。

ぎっくり腰のきっかけ

ぎっくり腰は、たいてい動作の最中に起きます。重いものを持ち上げるなどの大きい負荷が腰にかかるときだけでなく、日常の何気ないときでも急に起きることがあります。ぎっくり腰のきっかけで多いのは次のようなときです。

・ 床から物を持ち上げようとした
・ くしゃみや咳をした
・ 体を捻った
・ イスから立ち上がろうとした
・ ゴルフのスイングをした

ぎっくり腰では急に強い痛みが走って動けなくなることが多いのですが、初めは痛みが弱いけれどもじわじわと悪化して痛みが強くなるパターンもあります。

ぎっくり腰の痛みが続く期間は?

重度のぎっくり腰になった当日は、動けない、歩けないなど辛い思いをします。仕事も当然できなくなり、治るまでどれ位の期間がかかるのか不安になります。個人差はありますが、2日目や3日目になると、少しずつ動けるようになり、4日目には仕事に復帰できるケースが多いようです。

重度の痛みは3、4日で治まることが多いものの、軽度の痛みが残り、腰痛が慢性化してしまうことがあります。何が原因でぎっくり腰になったのかを知り、完治させられるように治療を受けることをお勧めします。

ぎっくり腰の本当の原因とは

ぎっくり腰は、病院へ行っても原因不明と整形外科の先生に言われてしまうことが多いのですが、実際は、腰の椎間板、椎間関節、靭帯、筋肉などの損傷から発生します。一体なぜそれらが損傷するのでしょうか。

実は、悪い姿勢などの生活習慣がもとになり、長い時間をかけて少しずつ椎間板や椎間関節、靭帯、筋肉に損傷が蓄積しているからなのです。そして気づかぬうちにその損傷がピークに達しているところで、ちょっとした動作がきっかけで一線を越え、ぎっくり腰になったのです。

例えば不良姿勢で長時間に亘ってデスクワークをすると、腰の椎間板に過大な負担がかかります。1日では椎間板がわずかに傷むだけですが、何年も積み重ねると大けがをしたときと同じように椎間板が傷んでしまいます。 このように、わずかなダメージが繰り返し積み重なって最終的にぎっくり腰が起きます。

ぎっくり腰の原因は、冷えや肥満だなどと言われることもありますが、正しい原因を把握すれば、自ずと対策も図りやすくなるのです。

参考文献:いわゆる「ぎっくり腰」は椎間板性疼痛か

ぎっくり腰の検査・診断

ぎっくり腰で病院へ行くとたいていレントゲン撮影をしますが、意外にもレントゲンでぎっくり腰の原因が分かることはまずありません。なぜなら、レントゲンは骨の状態を見るのには役立ちますが、ぎっくり腰の主な原因は椎間板、靭帯、筋肉等の損傷であり、それらの状態はレントゲンでは分からないからです。

レントゲンが診断の役に立たない証拠に、最新の腰痛診療ガイドラインでは、ぎっくり腰(急性腰痛)にレントゲンを撮ることは推奨されていません。

当院ではまず姿勢を分析し、腰に負担がかかりやすいような歪みや側弯があるか検査します。次に背骨を触診して、背骨の可動性、柔軟性を検査します。さらに、腰を支える筋肉の硬さや筋力を調べて腰周辺にアンバランスがないかを検査します。種々の検査で得た情報を統合して診断を下します。

参考文献:いわゆるぎっくり腰の X 線所見

ぎっくり腰の当院の治療法

薬に頼らず根本からぎっくり腰を治す治療を当院では行っています。ぎっくり腰の当院の治療法の解説はこちら。

自分でできる湿布などの応急処置・ぎっくり腰の治し方

応急処置に湿布や痛み止め

ぎっくり腰の応急処置で最も手軽にできるのが、湿布やロキソニンなどの市販薬を使うことです。湿布を冷やす目的で貼る人もいますが、湿布は痛み止めの成分を皮膚から吸収させる立派な鎮痛剤です。

ぎっくり腰は冷やすか?温めるか?

激しい痛みに襲われているぎっくり腰の人は、アイスパックで腰を冷やすのがよいでしょう。10~20分冷やしてみましょう。冷〇ピ〇では、冷やす効果は全然足りません。一方、お風呂で腰を温めるのも応急処置として有効なことがあります。固まった筋肉がほぐれるからです。ただし、逆効果になることもありますので、他の方法が効かないときだけにしましょう。

ぎっくり腰にコルセットやテーピング

ぎっくり腰になったら、コルセットなどのサポーターがあれば着用してみましょう。腰の傷んだ箇所への負担が減って、痛みが軽くなることが多いものです。テーピングもコルセットに近い効果がありますが、急性期には、コルセットほどの効果は得られないでしょう。

ぎっくり腰にストレッチなどの体操や筋トレは?

腰を前後に伸ばすストレッチなどの体操もぎっくり腰に有効な場合があります。ただ、痛くてできないことのほうが多いでしょう。軽度のぎっくり腰の方に限ります。筋トレは痛みが治まってから行うものです。

参考文献:脊柱矯正ストレッチング

ぎっくり腰にマッサージ

自分で腰をマッサージしても、例えばお腹が痛いときにお腹をさすって楽になるぐらいの効果しか得られないでしょう。ぎっくり腰のマッサージ治療はとても難しいので、腰痛治療のプロが行うのでなければ、マッサージで治すことは難しいでしょう。

ぎっくり腰の予防

竹谷内医院ではぎっくり腰の患者さんに、予防法を積極的にお伝えしています。正しい姿勢の取り方を身に付け、ストレッチなどの体操も行うと、ぎっくり腰の予防に有効です。

ぎっくり腰予防の正しい姿勢

ぎっくり腰予防のための正しい姿勢の取り方は、腰痛について詳しく解説しているページに記載している正しい姿勢の取り方と同様です。ぜひご参照ください。

ぎっくり腰予防にお勧めのストレッチ

鼡径部のストレッチ

1つ目の鼡径部のストレッチは、腸腰筋を伸ばす目的で行います。腸腰筋は、意識しにくいところにあり、腰の前側の奥深くにあります。とても凝りやすい筋肉です。腸腰筋は、鼡径部をストレッチすることで、伸ばすことができます。具体的な方法は、まず左右の足を大きく前後に開脚します。そして、上半身を若干後ろに反らしたまま、骨盤を下げていきます。すると、後ろ足のほうの鼡径部、すなわち腸腰筋をストレッチすることができます。10~20秒キープし、2、3回繰り返します。

腰丸めストレッチ

2つ目の腰丸めストレッチは、腰の後ろ側の脊柱起立筋や大殿筋を伸ばすものです。椅子に腰かけ、体を前に倒して胸を膝につけます。リラックスしたまま2、30秒キープします。デスクワークの合間にでも手軽にできますので、一日に何度も行うとよいでしょう。

 

ぎっくり腰になったら病院の何科に行く?

腰を治療する専門の診療科は、何といっても整形外科です。

ロキソニンなどの痛み止めをもらうだけなら、内科や外科の先生も処方してくれますが、「餅屋は餅屋」といいますから、病院へ行くなら整形外科が一番のお勧めです。

ペインクリニックの先生も痛みの専門家ですが、もともと手術で麻酔をかけて眠らせる麻酔科を専門としていた先生がペインクリニックへ転向したケースが多いです。治療はできますが、診断に関しては整形外科と比べると、真の専門家とは言い難いです。

整形外科でぎっくり腰が治らないで長引いたときに、ブロック注射をしてもらうために行くのがよいでしょう。

参考文献:病歴と非ステロイド性消炎鎮痛薬の治療効果からみた腰痛の病態