【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2019年12月13日 公開日:2019年12月13日

股関節に障害があると主に立ち上がった時や歩き始めに脚のつけ根(鼡径部)やお尻、太ももに痛みや違和感を感じるなどの症状が出ます。股関節の障害が悪化すると、寝返りのときや、あお向けで寝ているときにも痛みが出ます。また、股関節が曲がりにくくなるので、膝を持ち上げる動作(屈曲)で痛みやこわばりが生じやすくなります。坐骨神経痛に症状が似ている場合もあります。そのため、靴下をはく動作や階段の昇り降り、正座などが困難になったり、あぐらで座ると脚が開かなくなります。ひどくなるとデスクワークなどで椅子に腰かけているだけでもお尻や太ももに痛みが出ます。症状のある方の多くは女性です。

股関節痛の原因

股関節に痛みがあった場合、多くの方が思い当たる原因はなく、突然痛くなったと感じます。しかし、ほとんどの方は知らないうちに股関節に問題が生じてきたか、股関節に負担をかけてきたと考えられます。痛みの直接の原因は関節軟骨の摩耗や関節の変形ですが、軟骨の摩耗を早める姿勢や生活習慣をしていると症状がさらに悪化してしまいます。

股関節痛の病気の種類

発育性股関節形成不全(先天性股関節形成不全)

乳児期に無理な力がかかると、赤ちゃんの股関節が脱臼を起こしその後の股関節の成長が不完全になることがあります。

臼蓋形成不全

股関節は骨盤にある窪みに太ももの骨がはまり込んだ構造をしています。骨盤の窪み を臼蓋といいますが、臼蓋のくぼみが浅く、不完全である病気を臼蓋形成不全といいます。成人の7%の方に臼蓋形成不全があります。大腿骨と臼蓋がうまく噛み合わない事によって、摩擦が生じ、軟骨に負担がかかり関節を消耗します。これにより股関節に炎症が起こるため、臼蓋形成不全がある人は関節の変形を来して、痛みを生じる変形性股関節症になりやすいのです。

変形性股関節症

加齢とともに股関節の変形が起こる病気です。発育性股関節形成不全の人や、成人の臼蓋形成不全の人に起こりやすいです。一方で、もともと股関節に異常がない人でも、高齢になるにつれ、股関節が変形して股関節、腰、太もも等に痛みが出るケースが増えています。初期の段階では、関節軟骨が摩耗して関節の隙間が狭くなります。進行すると関節周囲に骨棘と呼ばれる骨のでっぱりができたり、骨の内部に空洞ができたりします。

病院での股関節痛の治療法

主な治療として、股関節の変形の進行を防ぎ、痛みを改善する保存療法を行います。症状が進行し関節の変形が進行してしまうと、股関節を人工の関節に置き換える手術(人工股関節置換術)を行います。人工股関節は本来の股関節に比べ可動域が狭く、人工の関節が脱臼することもあり、手術後はリハビリが必要です。人工関節も摩耗して劣化するので耐用年数は15年程度と言われています。そのため15年くらい経つと、再び病院での手術が必要になることがあります。そのため可能な限り保存療法で対処できるうちに当院で行っているようなリハビリ治療で股関節の改善を行いましょう。

股関節痛に対する手で行うリハビリ治療法

当院では、なぜ股関節に負担がかかっているかを詳しく分析します。股関節周囲の筋肉が弱くなっていれば、単に鍛えるのではなく、なぜその筋肉が弱くなっているのかを検査します。その原因が腰椎や骨盤にあれば、関節を調整し、股関節の周囲の筋肉が正常に働けるように改善します。また、狭くなった関節の隙間を広げるリハビリ治療をします。また、体の前後左右のバランスの不均衡や姿勢の悪さは、股関節にとって負担になります。そのため股関節周囲だけでなく、首や肩、足の状態も治療することがあります。悪くなった股関節だけでなく、全身を治療することで股関節の状態を改善するため、痛みの軽減だけでなく、長期的な改善や予防が期待できるのがリハビリによる治療の特徴です。

また、当院では院長が考案した体操療法の股関節スイング(足スイング)を指導して効果を上げています。「股関節が痛い」と感じたら、無理なストレッチ、マッサージをせずに、まずはご相談下さい。