【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2019年12月13日 公開日:2019年12月13日

四十肩・五十肩とは、肩の周囲が痛み腕が上がらなくなる病気で、40歳代、50歳代に多いためこのように呼ばれます。医学的には肩関節周囲炎と言います。一般的には40歳代、50歳代の方に多い病気ですが、高齢の方に起こることもあります。

四十肩・五十肩の症状

腕や肩を動かした時の痛みと、腕の動かせる範囲が狭くなることが特徴です。日常生活では髪を結ぶ、髪を洗う、高い場所の物を取る、手を腰の後ろに回す、上着を着る時などの動作で痛みが起こります。症状が悪化すると横に寝た時、腕を動かさなくても強く痛み、睡眠が妨げられる原因になります。

四十肩・五十肩の原因

症状はあるのに骨や筋肉などに異常が見つからなかったもの、つまり特定の原因が分からなかったものを、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)に分類します。実際には肩の関節内部や周囲の筋肉が、固まったりくっついたりしていますが、それらの異常はX線やMRIなどの画像検査では見つけることはできません。当院では肩関節を手で触診し、動きをみることで画像診断では分からない肩の異常を発見します。

四十肩・五十肩の3つの段階

四十肩・五十肩は症状の進行具合によって、大きく3つの段階に分かれます。

  1. 急性期:症状が始まってから最初の1~2か月は、炎症のため肩が強く痛むことがあります。腕をほとんど動かせず、痛みのため眠ることができない方もいます。
  2. 慢性期:急性期の後、2~3か月で痛みは徐々に和らいでいきますが、動かす方向によってはズキッと痛む場合があります。症状が落ち着くにつれて、肩の関節、筋肉が固くなっていきますので、痛くても少しずつ動かすことが重要です。
  3. 回復期:慢性期の後、3~6か月は更に痛みが弱くなり、腕を動かすことも楽になってきます。しかし、動かずに安静にしていると肩関節や周囲の筋肉が固まり、運動制限が残ってしまいますので、積極的に肩を動かすリハビリが必要です。

病院での四十肩・五十肩の治療

病院では痛み止めの注射や飲み薬などが処方されます。またリハビリとして温熱療法やマッサージなどが行われます。しかし、それらの治療を受けて肩の痛みが治まった後も、腕が上がらないままの方が多くいます。

五十肩・四十肩に対する手で行うリハビリ治療

当院では「肩が痛い」「腕が上がらない」という症状をさらに詳しく分析します。肩の関節のどの部分の動きが悪いのか、腕を動かしているたくさんの筋肉のうち、どの筋肉が弱く、どの筋肉が固く伸びなくなっているのかを詳しく検査し、関節や筋肉に対して治療を行います。

一般的な整形外科と異なり当院では、関節の動きが悪い、力が入りにくい、といった状態も治療の対象になります。 当院では痛みを抑えるだけでなく、肩を正常に動かせるように回復することを治療の目的とします。リハビリやエクササイズも活用して、日常生活が快適に過ごせる、趣味のスポーツがまたできる、といった目標を目指して治療を行います。手で行うリハビリ治療は背骨と骨盤の治療といったイメージが強いかもしれませんが、手足の関節を手で調整する治療も得意としています。

 

症例1 50代男性 上着を着る時、ゴルフ、寝ている間の肩の痛み、五十肩

症状

上着を着る時や、ゴルフの練習中にズキッとした痛みを肩に感じる。肩が痛いことは以前から時々あったが、自然に治っていたため今回もそのままにしていた。しかし2か月近くたっても良くならず、夜寝ている間も痛くなってきたため来院した。

体の状態

典型的な五十肩で、肩関節の可動域(腕を動かせる範囲)が大きく減少していて、肩周囲の筋肉も固まっていた。強い炎症が治まり、徐々に固まっていく慢性期の状態で、来院時の肩関節の可動域は正常の半分以下になっていた。

治療内容

肩関節に対する手で行うリハビリ治療と並行して、自分で肩を動かすリハビリテーションを行った。約2週間で動作時の痛みは軽減し、1か月程で日常生活にほぼ支障がない程に腕を動かせるようになった。

コメント

五十肩の治療で大切なのは症状がどの段階なのかを見極め、適切な治療、リハビリを行うことです。痛みが治まったことに安心してリハビリをやらないと、肩の状態は悪化していきます。普段から肩を動かし、動きの異常に早く気付くことが予防につながります。

症例2 40代女性 ブラシで髪をとかす時の肩の痛み、腕の上げにくさ、四十肩

症状

ブラシで髪をとかす時に、時々肩に痛みを感じる。またスポーツクラブでエクササイズの最中、腕が上がりにくい。無理に腕を上げようとすると痛みがある。

体の状態

強い炎症反応が起きる前の、初期の四十肩であった。肩関節のスムーズさが失われ、腕を上げる動作に無理が生じていた。また、猫背姿勢によって肩甲骨の位置が上にずれていたため、さらに腕の上げにくさを強めていた。

治療内容

固くなってきている肩関節の治療と猫背姿勢の治療を並行して行った。4回(約3週間)の治療で、猫背姿勢が改善した。肩甲骨の位置が正常化したことによって、腕を上げる動きがスムーズに無理なく行えるようになった。

コメント

腕と肩甲骨の間の関節が肩関節です。肩甲骨は筋肉によって背骨とつながっていますから、背骨のカーブの変化によって肩甲骨の位置も変化します。例えば猫背姿勢は肩甲骨の位置を、体の前方、上方に変化させます。肩甲骨の位置が悪いと、腕を無理な方向に動かすことになってしまい、肩を痛める原因となります。四十肩・五十肩が悪化する前に、早めに当院で検査・治療を受けることをお勧めします。