【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2019年12月13日 公開日:2019年12月13日

手の親指から薬指にかけての範囲にしびれが起こる病気です。手首の手のひら側には骨と靭帯で囲まれた手根管と呼ばれる場所があり、手根管の中には正中神経が通っています。何らかの原因で手根管の中の正中神経が圧迫され、正中神経がつかさどる、親指、人差し指、中指、薬指の中指側半分の範囲にしびれが起こることを手根管症候群と言います。手根管症候群は中年以降の女性や、妊娠中の方、手首の骨折歴のある方などに多くみられます。

手根管症候群の原因

様々な原因で手根管の中の正中神経が圧迫されると、手の小指以外の部分にしびれが起こります。

むくみによる圧迫

更年期や妊娠中は女性ホルモンの変化によって体の水分量が変化し、手足のむくみが起こりやすくなります。また、腎臓の病気のため透析治療を受けている方もむくみが起こりやすくなります。むくみによって手根管の中が膨らむことで、正中神経が圧迫されます。

骨折などによる手根管の変形

手首の骨折やスポーツによるケガをしたことにより、手首の骨が変形し手根管が狭くなると起こります。また加齢によっても、手根骨(手根管を作る小さな骨)の動きが悪くなり、わずかな手根骨のズレによって圧迫が起こることもあります。

腫瘍

腫瘍などが手根管内部にできた場合も正中神経が圧迫されるため、手根管症候群の原因となります。

病院での手根管症候群の治療法

病院では対症療法として消炎鎮痛剤(痛み止め)やビタミン剤などの飲み薬やシップ薬などが処方されますが、あまり効果はありません。自然回復が見られずしびれが改善しない場合は、手術により手根管の「蓋」にあたる靭帯を切開します。腫瘍が原因の場合もやはり手術により、腫瘍を取り除きます。

手根管症候群の手で行うリハビリ治療

当院では、手根管を作っている手根骨(手のひらの手首近くにある8個の小さな骨)を検査します。

手根骨は互いに靭帯でつながっており、わずかに動くことで手のひらの柔軟な動きを生み出しています。この手根骨の位置と動きが悪いことで、手根管の内部が狭くなり、むくみなどの症状が重なることでしびれが生じやすくなります。 手根骨の動きは、骨折などで手首を固定した経験があると固くなりやすいですが、骨折したことがなくても加齢とともに徐々に固くなる傾向があります。

手で行うリハビリ治療では、位置や動きの悪い手根骨を手や専用の器具によって調整し、手根管を広げることで、しびれが起こらないように改善します。また当院では、手根管の「蓋」の部分の靭帯に、レーザー治療器を使うことでしびれを軽減する治療も行っています。レーザー治療は、痛みや熱さはなく、安全で効果的な治療法です。