【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 整形外科医、竹谷内康修

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2021年3月16日 公開日:2019年12月13日

むち打ちとは

むち打ちとは、主に交通事故の衝撃によって首へ過剰な負担がかかり、首の痛みや腕のしびれ、頭痛、めまい、吐気などの様々な症状が起きた状態のことをいいます。むちうちは、医学的には頚椎捻挫や外傷性頚部症候群などと呼びますが、一般にはむち打ち症(ムチ打ち症、鞭打ち症)と呼ばれています。むち打ちは、治りにくいことが多く、数か月通院しても後遺症が残ってしまうこともあります。

むち打ちの症状

むち打ちで多い症状

・首が痛い    ・首の張り
・頭痛      ・肩の痛み
・肩が重い    ・背中の痛み
・手がしびれる  ・手足の脱力
・腕がしびれる  ・腕がだるい
・腰痛      ・吐気
・めまい     ・ふらつき
・耳鳴り     ・嚥下困難
・記憶障害、   ・集中力障害
・視覚障害

翌日以降に症状が現れることも

事故直後には全く症状が無いけれど、翌日以降に首が痛くなった、腰痛が出てきたなどということは珍しくありません。事故直後は精神的なショックがあり、体に意識が向かないこともありますし、時間とともに体の変化が徐々に現れて、痛みなどの症状が出てくることがあるのです。

参考文献:いわゆるむち打ち損傷の症状について

むち打ちの後遺症

むち打ちは、病院で数か月間治療を受けても十分に効果が上がらず、首の痛み、首や肩の張り、腕や手のしびれ、頭痛、めまいなどが後遺症として残ってしまうことがあります。数年経っても症状が残っていることも少なくありません。事故後のなるべく早い時期から関節の調整などの根本的な治療を受けて首の状態を改善させることが大切です。

 

色々なむち打ちの原因

自動車同士の交通事故

むち打ちの一番の原因は自動車同士の交通事故です。特に自動車乗車中に、後方から追突されるケースです。不意に追突されると身構える時間が無いため、首をひどく損傷して重症化します。

歩行中の事故

次に多いむちうちの原因は、歩行中に自動車や自転車にぶつけられて受傷するケースです。突き飛ばされて転倒するので、首だけでなく腰や手足にも怪我をします。

スポーツ中の怪我

交通事故以外のむち打ちの原因は、サッカーやラグビー、柔道などのスポーツです。不意にタックルされたり、投げられたりしてむち打ち症になります。

むち打ちで首が傷む原因は、首は細くて長い上に、5キロもある重たい頭を支えていることにあります。追突などで振り回された頭は、細長い首に過大な負荷を与え、頚椎や周囲の筋肉を傷つけます。

むち打ちの検査

診察

診察では主に、関節の可動域がどの程度制限されているか、神経の損傷があるかを確かめる検査をします。

レントゲン検査

むち打ちの検査でまず病院の整形外科で行われるのはレントゲンです。レントゲンでは骨の状態を見ます。しかし、重大事故でない限り、むちうちによる骨折などの骨の異常が見つかることはありません。レントゲンでは残念ながら、むち打ち症で問題となる筋肉や関節の損傷の程度は全く分かりません。つまり、交通事故に合っても入院にならないような大半のむちうち症では、レントゲンは治療上、あまり役に立たない検査なのです。

MRI

交通事故に合い、腕のしびれや痛み、足の痛みやしびれなどの神経症状が現れた場合は、神経の圧迫の程度や脊髄の損傷を確かめるため、MRI検査を行います。また、肩や膝、股関節などの関節痛が出た場合もMRIを行うことがあります。

参考文献:むち打ち損傷患者の検討

むち打ちの病院での治療法

むち打ちになると、病院の整形外科を受診することが多いでしょう。整形外科での一般的な治療は以下のようになります。

痛み止め(消炎鎮痛薬など)

首の痛み、腰痛などに対し、ロキソプロフェン、ジクロフェナクなどの鎮痛薬が処方されます。傷んだ組織の炎症を鎮め、痛みを和らげる治療法です。病院で出されたり、薬局で買ったりする湿布も消炎鎮痛剤の一種です。
痛みが強いむち打ちには、プレガバリンという作用の強い薬を処方することもあります。それで効果が無いと、さらに強力なトラマドールといった麻薬類似薬を使用します。これらの作用の強い薬は、吐き気、めまい、眠気などの副作用が多い傾向にあります。

リハビリ

整形外科でよく行われるリハビリは、超音波、低周波、干渉波、ホットパック、牽引療法、運動療法などです。

頚椎ソフトカラー

頚椎ソフトカラーはほとんど効果がないとされていて、着用は勧められていません。しかも、長い間にわたって使用すると、障害が長期化するとも言われています。しかし、整形外科で頚椎カラーを処方するところが今でもあります。

 

むち打ちの当院での治療法

なかなか改善しない、治らないむち打ち症へ、当院では筋肉や関節への治療、レーザー光線を使った治療、健康度をアップする生活指導など、様々な治療法を取り入れて体を根本から治しています。