【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修
慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。
最終更新日:2021年2月21日 公開日:2019年11月6日
腰痛予防のためのマットレス選び
意外と多い睡眠時の腰痛
あお向けに寝ると腰が痛くなる、腰が痛くて夜目が覚める、朝起きると腰が痛い、ベッドから起き上がるのがつらいなど、睡眠と関係する腰痛は多いものです。
その理由は2つあります。
1つ目は腰の状態が悪いから。
2つ目はマットレスが体に合っていないから。
今回は、腰痛と深くかかわるマットレスの硬さについて説明します。
マットレスをどう選ぶ?
患者さんからよくこのようなことを聞きます。「マットレスは硬いほうがいいのですよね。」寝具売り場に並ぶマットレスは、柔らかいものから硬いものまで様々です。
ただ硬ければ良いのでしょうか。寝心地が良ければいいのでしょうか。それとも店員さんのお勧めなら安心なのでしょうか。
どのようなマットレスが体に良いのかを理解して選ばなければなりません。
睡眠と姿勢
旅先の宿でマットレスが硬くて腰や背中が痛くなったことはありませんか。
痛くなったのは、マットレスの硬さが体に合わず背中や腰が悪い姿勢になっていたからです。
そのような場合は、寝ている間に体を傷めているだけでなく、夜中に何度も何度も寝返りを打ち、眠りが浅くなって疲れも取れません。
体の柔軟性とマットレスの硬さ
寝たときの姿勢は、主に3つの要素の関係で決まります。それは体の柔軟性、体型、マットレスの硬さです。
まず体の柔軟性を考えてみましょう。体が柔らかい人は、背骨を容易に変形させてマットレスの形や硬さに合った姿勢になれます。つまり多様な硬さのマットレスに適応できます。
それに対して体が硬い人は、背骨を変形させにくく、マットレスにフィットする姿勢を取りにくいのです。従って体が硬い人は、マットレスがしなやかに変形して体を支えてくれなければなりません。
それには硬いものより比較的柔らかいマットレスを選ぶ必要があります。
4つの体型とマットレス硬さ
次に体型と就寝中の姿勢を考えます。ここで体型を正常型、くびれ型、前弯(ぜんわん)型、寸胴(ずんどう)型の四つに分類します。くびれ型はウエストが胸部や骨盤に比べてとても細く、前弯型は腰が前へ大きく反れてお尻が後ろへ突き出ていて、寸胴型はウエストのくびれが少ない体型です。
くびれ型や前弯型の方は、体に大きな凹凸があるため、寝ると背骨の並びが大きく変化します。くびれ型の人は、横向きで寝ると、ウエストに隙間ができ、ウエスト部分の背骨が大きくたわんでそこに負担がかかります。
前弯型では、仰向けに寝ると腰の下に大きな隙間ができるので、やはり腰に負担がかかります。寸胴型の方は体に凹凸が少なく、横になっても体とマットレスの間に隙間はできにくいため、体の負担は比較的少ないです。
特にくびれ型や前弯型の方は、体とマットレスの間にできる隙間を埋める必要があり、しなやかに変形して体を支えてくれる柔らか目のマットレスを選ばなければなりません。
加齢と体の柔軟性
上記で柔らか目のマットレスを勧めましたが、「私は若い頃から硬い布団で寝ていて問題なんてなかった」という人もいるでしょう。
若い頃、特に子供の頃の体は柔らかくて凹凸のない寸胴型なので、せんべい布団や硬い板の上でも寝られます。
しかし、体は年齢と共に変化します。まず成熟した体には凹凸ができます。さらに、背骨は加齢により柔軟性を失います。
若い頃にしなやかなに曲がった背骨も、中年にもなれば硬くなって動ける範囲が少なくなります。加齢に伴って体は柔軟性を失い、気づかないうちに硬いマットレスに適応しにくくなるのです。
ベッドは歳と共に少しずつ柔らかいものに変えていくのが賢明です。
柔らかすぎもダメ
硬いマットレスは腰によくないのですが、もちろん柔らかすぎるのもよくありません。柔らかすぎると体が沈み込み、悪い姿勢になるからです。ただ、最近販売されているマットレスで、柔らかすぎるものはあまり見かけないので、購入する際にさほど気にしなくて大丈夫です。
柔らかすぎるマットレスは、たいてい昔の安物か、長年使用して劣化したものです。長年使ってスプリングやクッションが劣化すると、体重のかかる部分が深く沈み込んで体に負担をかけます。そういう場合はマットレスを交換する必要があります。
✔ ポイント
・体が硬い人は比較的柔らかいマットレスを選ぶ
・くびれ型や前湾型の方も柔らかめのマットレスを
・年齢とともに柔らかいマットレスに変えていく