【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2021年3月1日 公開日:2019年11月6日

腰痛が軽減する寝方とは。姿勢しだいで大きく変わる!

腰痛を患っている人のなかには、寝方によって痛くて眠れないことや、途中で目が覚めてしまうことがあります。

寝ている姿勢は、同じような格好が長時間になるので、既に腰痛を患って傷んでいる腰にはかなりの負担になります。

 

つまり、寝ている姿勢の腰への負担が痛みを引き起こす原因といえますが、寝方によって腰痛の解消法やコツがあるのでご紹介していきましょう。

 

仰向けの寝方はクッションで腰痛を軽減

 

仰向けで痛くなる原因

仰向けで腰が痛くなるのは、おもに女性に多い反り腰の人たちや、腰部脊柱管狭窄症などで坐骨神経痛を患っている人たちです。

その原因を考えてみると、仰向けの寝方は、股関節が伸びているため、それにつられて腰も反る傾向になります。

反り腰の人は仰向けの寝方では、腰の反りのために腰と布団の間にすき間が生じ、腰に支えの無い状態となって腰痛が出てきます。

腰部脊柱管狭窄症は、もともと腰を反ると神経の通る脊柱管が狭くなるのですが、仰向けの寝方で腰が反ると脊柱管が狭まって神経が圧迫され、足腰の痛み(坐骨神経痛)やしびれが出ます。

腰部脊柱管狭窄症の人が仰向けで寝ると

腰部脊柱管狭窄症は、もともと腰を反ると神経の通る脊柱管が狭くなるのですが、仰向けの寝方で腰が反ると脊柱管が狭まって神経が圧迫され、足腰の痛み(坐骨神経痛)やしびれが出ます。

 

仰向けに寝た時の痛み解消法

仰向けの寝方で腰痛を軽減する方法は、膝を立てることです。

膝を立てれば股関節が曲がり、腰も丸まって腰痛を防ぐことができます。実際には単に膝を立てるより、クッションを膝下に置いたり、厚めの座布団をふくらはぎの下に敷いたりする方法が有用です。

クッションや座布団を膝の下に置くと、寝ている間に外れることもあるので、敷き布団の下にクッションや座布団を入れて、膝やふくらはぎを持ち上げるのもよいでしょう。

横向きの寝方は腹巻きで腰痛を軽減

 

横向きで痛くなる原因

腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアの人たちは、横向きで寝ていると足腰に痛み(坐骨神経痛)やしびれが出て、つらい思いをすることがあります。

その原因は、腰椎や腰回りの構造にあります。腰椎は、がっちりした胸郭と骨盤の間をつなぐ一本の柱のようなものですが、腰椎の周りには、柔らかい内臓や筋肉しかありません。

そのため横向きの寝方では、腰椎には十分な支えがありません。そして腰椎がたわんだり、しなったりして神経を圧迫し、足腰に痛み(坐骨神経痛)やしびれが出ます。

 

横向きに寝た時の痛み解消法

横向きの寝方で腰痛や坐骨神経痛を解消するためには、腰椎を支える必要があります。

それには、腰のくびれ(ウエスト)部分に幅10センチくらいに細長く折ったタオルを敷くとよいでしょう。

ただし、寝ている間にタオルの位置がずれやすいので、もう一つの工夫があります。それは、腹巻きをして、腰の横の柔らかいくびれ部分に小さなタオルを入れこむ方法です。

こうすれば、くびれが埋まって体が寸胴になり、またタオルがずれにくくなります。

そして横向きの寝方で腰椎がしなって腰痛が出ることを防げます。

うつ伏せの寝方でもよいケース

うつ伏せの寝方は、腰椎が反り返った状態になるので、腰痛をわずらっている人は痛みが出やすい姿勢です。

しかし、腰が健康な人や柔軟性のある人にとっては、特に悪い姿勢ではありません。

そのような人たちは、うつ伏せの寝方をしても全然構いません。腰椎椎間板ヘルニアでは、腰を曲げるより若干反ったほうが楽な人もいますので、うつ伏せ寝を試してみてもよいでしょう。

 

上手に寝返りをして腰痛を予防・解消する方法

睡眠中に同じ姿勢を長くとっていると、体の特定の部分に持続的な負担がかかります。その持続的な負担を軽減したり、分散したりするために寝返りをしています。

ところが、ぎっくり腰や腰部脊柱管狭窄症などのひどい腰痛や坐骨神経痛をわずらっている人では、寝返り自体で強い痛みが出てしまうことがあります。

そこで、寝返りの際の腰痛予防法をお伝えしましょう。

 

まず、寝ている姿勢のまま、ひざと股関節を深く折り曲げて体をコンパクトにします。次に、軽く腹筋に力を入れます。

腹筋に力を入れたまま、上半身と下半身を同時に寝返りしたい方向へ動かします。

ここで上半身と下半身がばらばらに動いてしまうと腰がよじれて痛みが出るので、それを防ぐために腹筋に力を入れるのです。

注意深く寝返りをして、同じ姿勢を続けなければ、腰にかかる負担が減り、腰痛の早期解消にもつながります。

 

腰痛を軽減する寝具選び

先ほど述べたように、腰椎は、横向きではしなりやすく、また仰向けでは反りやすい特徴があります。

そのため腰をすでに傷めている人は、寝方によって痛みが出やすくなります。

そこで、寝方による腰痛を軽減するためには、腰をうまく支え、負担が少なくなる寝具(マットレスや敷き布団)を選ぶ必要があります。では具体的にどのような寝具が腰痛に有効か考えてみましょう。

 

まず、固いマットレス、すなわち高反発マットレスはどうでしょうか。

一般に、高反発マットレスは、体が当たる部分の沈み込みは小さくなります。沈み込みが小さいと、肩や背中、骨盤などの出っ張り部分で体を支えることになります。

言い換えると、面というよりも点で体を支えることになります。

すると、支えがもともと少ない腰椎はしなり、腰痛が出やすくなります。

 

一方、柔らかいマットレスで代表的な低反発マットレスはどうでしょうか。

低反発マットレスでは、肩や背中、骨盤などの出っ張り部分が大きく沈み込んで体を支えます。

つまり体を包み込むように面で支えることになります。

そのため高反発より低反発マットレスのほうが、腰椎の支えが大きくなります。そして、腰椎のしなりが減り、腰痛が軽減すると考えられます。

低反発マットレス以外では、適度に柔らかい独立コイル式マットレスも体の出っ張り部分を沈み込ませ、腰のしなりを防ぐので、腰痛が出にくいと思われます。