【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修
慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。
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【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修
慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。
最終更新日:2020年11月14日 公開日:2020年1月16日
スマホ首とは、日常的に頭を下に垂れた姿勢でスマホを長時間使い、首が痛い、首の後ろがこる、首の付け根のこりが取れない、肩こりがするなどの不調が現れた状態です。
頚椎は体の前側に膨らむように弯曲していますが、頭を下げてスマホを見る姿勢では、頚椎の弯曲が無くなり、まっすぐになっています。それが長時間続くと、まっすぐな状態が固定化されます。頚椎の弯曲が無くなりまっすぐになった状態をストレートネックといい、スマホ首はストレートネックを生じる最大の原因の一つです病院でストレートネックと診断されたあなたは、スマホ首かもしれません。
スマホを見ているときは顔が下を向いた姿勢になりますが、スマホ首では、正面を向いているときに、頭が前へ突き出た姿勢になっています。そのような姿勢では、5キロ近くもある頭を支えるために、首の筋肉に力が入りっぱなしになり、首こりや、肩こりが起きます。
首こり、肩こり以外にスマホ首でよくある症状は、首の痛み、首を後ろに反らすと痛い、頭痛、めまい、吐き気などです。
肩こりや頭痛、めまい、吐き気などでスマホ首かなと思い、病院の整形外科へ行くとどのような診断を受けるでしょうか。
病院へ行くと、首を触ったり、動かしたりした後、たいていはレントゲンを撮ります。スマホ首の場合、レントゲンで頚椎の配列が直線化したストレートネックが見られます。病院の整形外科の先生は、「スマホ首です」とは診断名を言いません。なぜなら、スマホ首というのは医学的な病名ではないからです。正しい診断名は頚椎症になります。
世間でスマホ首という言葉が使われるようになりましたが、スマホ首とは実は、スマホの長時間使用で起きた頚椎症という病気のことなんですね。
スマホ首の治し方で、重要なのはスマホ使用中の姿勢を正すことと次の項目で述べるストレッチ体操です。姿勢に関しては、まず、スマホ使用中に頭を大きく下げないことです。頭を下げないために、できるだけスマホを目線に近いところまで持ち上げて使います。その工夫として、右利きの人は右手でスマホを高く持ち、左手で右肘を支えることが挙げられます。このようにスマホ使用時には、両手を上手に使うと姿勢を正しやすく、スマホ首を治すとともに予防にもなります。
スマホ首の人は、首から肩に張っている僧帽筋にこりがあります。左の僧帽筋のこりを解消するストレッチ体操を解説しましょう。下の写真のように右手を頭の上からまわし、左の耳の上に当てます。右手でやさしく頭を右に倒し、左の首から肩が伸を伸ばします。左手は写真のように椅子をつかんでいると、より効果的にストレッチできます。そして20~30秒キープします。反対側も同様に行いましょう。2、3回繰り返すと効果的です。
スマホ首の人は頭を長時間垂れた姿勢をとっているので、自然と背中が猫背に固まってしまっています。すると、スマホを見ていないときも、頭が前に突き出た姿勢で、なおかつ猫背になります。そのような姿勢は首にかかる負担が大きいので、猫背を解消する必要があります。猫背の解消に効果的なのが下の写真のような背中のストレッチ体操です。
腰の後ろで手を組みます。そして腕を斜め後方に引き下げるように力を入れると、自然に丸まった背中が伸びて反りかえるようになります。10~30秒くらいキープします。1日に何度も繰り返し行うとよいでしょう。顔は正面を向いていてもいいですし、上を見上げるようにするとより背中が反りやすくなります。
当院のスマホ首の治療は、大きく分けて5つあります。
一つ目は、筋肉のこりで固まった首や肩、背中を熟練の手によるリハビリ治療でゆるめます。これだけで首こりや肩こりがかなり楽になります。
二つ目は、頚椎や胸椎の関節を手で調整します。いわゆるポキポキする治療です。もちろん苦手な人には行いません。
三つ目は、ストレッチ体操の指導です。前述のストレッチ体操に加え、他の有効なストレッチ体操もお伝えし、体の改善に加え、予防も目指します。
四つ目は、姿勢指導です。院長の著書「自分で治す!頚椎症」(洋泉社刊)で詳しく解説している正しい姿勢の取り方を丁寧にご指導します。
五つ目は、詳しい問診から患者さんの生活習慣上の問題点を洗い出し、個々に合わせた解決法をご提案します。
このように、当院では、スマホ首を根本から解消するための治療を行っています。
スマホ首になり、首が痛い、首こりが辛い、毎日頭痛がするなどの症状で困っている人は、どんな枕を使ったほうがよいのでしょうか。
スマホ首の人は、頚椎がまっすぐになったストレートネックの状態なので、首のあたりが高く盛り上がった枕(首枕という)がよいと考えている専門家がいます。寝ている間に枕で頚椎の配列を修正しようと考えているのです。しかし、それは好ましくありません。その理由をご説明します。スマホ首の人は首の筋肉が固まっていて、頚椎の動きも固くなっています。首のあたりが盛り上がった首枕を使うと、固まった首を無理に反らせることになり、かえって首が辛くなる恐れがあります。
ではどのような枕を使えばよいのでしょうか?それは、やや高めの枕です。スマホ首の人は、頭が前に突き出た姿勢で首や背中が固まっているため、高めの枕を使うことでその形をある程度保つのです。そのほうが首は楽なのです。もちろん寝ている間に頚椎の配列の修正はできませんが、首の辛さの解消は、前述のストレッチ体操と、姿勢をよくすることでできます。