頚椎症性神経根症とは、頚椎の椎間関節、椎間板などが加齢変化で出っ張ることで、脊髄から枝分かれした神経根を圧迫し、痛みしびれ等の症状を起こす病気です。主な症状は、腕の痛み、腕のしびれ、指や手のしびれ、首の痛み、肩の痛み、肩甲骨付近の痛み、腋の痛みです。悪化すると握力が低下したり、腕の力も弱くなったりするほか、皮膚の感覚が鈍くなります。
頚椎症性神経根症の検査・診断法
診察
首を上下左右に動かすと、腕に痛みやしびれなどの症状が現れたり、悪化したりすることが診断上のポイントです。典型的には、顔を上へ向け、さらに腕に症状のあるほうへ頭を傾ける検査(スパーリングテストという)で、腕の症状が増強すると、頚椎症性神経根症とほぼ診断できます。筋力検査で手や腕に力が入るか、皮膚の知覚が低下してるか、腱反射が正常かどうかなどの神経の検査も行います。
画像検査
頚椎症性神経根症では多くの場合、レントゲンを撮ると7個ある頚椎同士の間隔が狭くなっている箇所があります。特に第4頚椎と第5頚椎の間、第5頚椎と第6頚椎の間、第6頚椎と第7頚椎の間の三ヶ所が狭くなりやすいです。また、神経根の通り道である椎間孔が骨棘により狭くなっています。MRIではやはり骨棘や椎間板の膨隆により、椎間孔が狭くなっていることが確認されます。ただ、頚椎症性神経根症は、レントゲンやMRIなどの画像検査をしなくても、前述の診察でほとんどの場合で診断を下せます。
頚椎症性神経根症の当院でのリハビリ治療
頚椎症性神経根症のリハビリ治療で大切なことが3つあります。
・神経根への圧迫を軽減させること
・神経にかかる牽引力を減らすこと
・頚椎にかかる物理的負荷を減らすこと
そのために、当院では以下のような様々なリハビリ治療を組み合わせて行い、効果を上げています。
手を使ったリハビリ治療
頚椎症性神経根症の治療では、神経根への圧迫を減らすことが最も重要です。頚椎周囲の筋肉の硬い凝りが、神経根の通り道を狭め、神経根を圧迫します。そこで、手を使った種々の高度なリハビリで、頚椎周囲の筋肉の硬さ(こり)を取り除きます。
また、瞬間的に頚椎へ力を加え、関節を動かす特殊なリハビリも行います。この治療も頚椎周囲の筋肉の硬さを和らげます。
さらに、筋肉が緩んだところで、椎間孔(神経根の通り道)を広げる治療をして、神経根の圧迫を減らします。すると腕の痛み、手のしびれなどの症状が解消していきます。
胸椎の丸みを伸ばす治療
頚椎症性神経根症を患っている患者さんの多くは、悪い姿勢を続け、背骨が猫背になっています。猫背になると頭が体の前方に位置するようになり、頚椎にかかる負担が大きくなります。そこで、頚椎の負担を減らすために猫背、つまり胸椎の大きくなっている丸みを伸ばす治療をします。瞬間的に力を加え、胸椎の関節を動かす方法を用います。
物理療法のレーザー治療
頚椎の周囲の筋肉の硬さを和らげるため、レーザー光線を首に当てます。Lumix2という米国製の機器を用い、照射しても熱を生じないコールドレーザーを使います。コールドレーザーは、筋肉を緩めるだけでなく、細胞を活性化し、傷んだ組織を修復する作用もあるため、圧迫された神経根に向けて照射することもあります。
院長考案の頚椎の隙間を広げるストレッチ体操を指導
院長は著書の「頸椎症の名医が教える竹谷内式首トレ」(徳間書店刊)などで、頚椎症性神経根症の自分でできるオリジナルのストレッチ体操を紹介してきました。院長考案のストレッチ体操は、頚椎の隙間を広げて神経根の圧迫をゆるめ、神経の回復を促します。本では説明しきれない体操のコツをしっかりお伝えします。
頚椎症性神経根症になりやすい生活の改善
頚椎症性神経根症は、デスクワークを長時間行っている人に多く発症します。姿勢が悪かったり、ワークステーションを整えられていなかったりすることで、頚椎の状態が悪化して発症しています。正しいパソコンの配置、モニターの高さ、キーボードの位置をお伝えし、楽にとれる良い座り姿勢もご指導しています。日常の生活習慣が悪いと、なかなか症状が改善しないだけでなく、良くなっても再発しやすいので、生活習慣の改善を非常に重要視しています。