【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修
慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。
東京駅・日本橋駅至近の整形外科
【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修
慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。
最終更新日:2020年11月15日 公開日:2019年12月4日
一口に膝の痛みといっても多様な症状があります。最も多いのが膝の内側の痛みです。立ち上がる時や歩き始めに膝の内側が痛むケースが多いです。その他の症状を挙げます。
・曲げると膝が痛い
・階段で膝が痛む
・ポキッと鳴って膝が痛む
・歩くと膝が痛い
・走ると膝の外側が痛い
・膝のお皿の前側が痛む
・膝がハマってしまって痛い
膝の痛みの原因は様々ですが、加齢で生じる変形性膝関節症、膝を捻ったときに起こりやすい半月板損傷、膝のお皿がこすれて起きる膝蓋大腿関節障害、膝の曲げ伸ばしで外側が痛む腸脛靭帯炎などが代表的です。
変形性膝関節症(X脚の人に多い)、外側半月板損傷、腸脛靭帯炎
変形性膝関節症、膝蓋大腿関節障害
半月板損傷、ベーカー嚢腫(痛みより違和感や不快感)
膝蓋骨亜脱臼、オスグッド・シュラッター病、靭帯損傷、半月板損傷
靭帯損傷、半月板損傷といった怪我が20代や30代の膝の痛みの原因です。レントゲンで変化は見られなくても30代で変形性膝関節症の症状が現れる人も珍しくありません。
変形性膝関節症が始まる年代です。
変形性膝関節症、ベーカー嚢腫
変形性膝関節症、偽痛風
変形性膝関節症は膝の関節軟骨や半月板が年齢とともにすり減る事が原因となり、膝痛が出ます。レントゲンで骨の変形や関節の隙間の減少が見られると、変形性膝関節症と診断されます。
変形性膝関節症の症状は、立ち上がる時や歩き始めなど、膝を動かし始めた時の膝痛が多く、特に膝の内側や前面が痛みます。階段の昇り降りが辛く、下りのほうがより痛むのが特徴です。しゃがむと痛い、正座をした際の痛み等の症状もあります。自転車を漕ぐ際などに違和感を伴うこともあります。
軟骨がすり減って関節に炎症が起こると、膝関節の中に関節液が溜まる場合があります。この状態は関節水腫と呼ばれ、いわゆる膝に水がたまるた状態です。膝が腫れているので関節を折り曲げるとつっぱって痛みが出ます。
変形性膝関節症は、男性より女性に多く、50代から急増します。運動不足で大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)が弱くなっている中高年の方、O脚の人、頻繁に膝の曲げ伸ばしをする人に多くみられます。また、体の左右のバランスが悪いことも、片方の膝に負担をかけて変形性膝関節症の原因になります。
変形性膝関節症では、多くの場合、膝の周りの筋肉が硬直し、筋力が弱まっています。その結果、膝の関節にかかる負担が増加してしまっています。そのため、筋肉の硬直を手でゆるめる治療を行うと改善します。
また、手で関節の調整を施すことで、関節の硬さを取り除きます。
さらに膝周囲の筋肉の硬さを取り除くストレッチ等の体操を指導し、日々行っていただき、膝の状態を安定化するようにします。合わせて筋トレを行い、膝の関節を安定化させるようにします。
腰や骨盤周りの左右の筋肉のバランスが悪いと、歩く時に膝に負担がかかってしまうため、筋肉の左右のバランスを改善する調整も行います。
膝に水がたまりやすい人には、強い光を当てる米国製のレーザー治療機器を使い、膝の炎症を鎮めます。
このように当院での変形性膝関節症の治療は多面的な治療を行っていくことになります。
変形性膝関節症の整形外科の病院での治療法には、保存療法と手術療法の2つがあります。保存療法では、薬物療法で痛みや腫れをやわらげながら、運動療法で関節の周りの筋肉を鍛えます。病気の程度によっては手術、例えば人工膝関節置換術、高位脛骨骨切り術などを行うことがあります。
半月板は膝関節を形成する脛骨と大腿骨の間にある軟骨です。半月板損傷の原因の一つ目は加齢現象です。歳とともに半月板の一部に亀裂が入ったり、ちぎれたりすることで、膝の曲げ伸ばしに痛みを生じます。
2つ目の原因は、スポーツなどで強い力が加わることや、膝を捻挫することで半月板を損傷することも多いです。
損傷した半月板の断端が関節にはさまって膝の曲げ伸ばしの際にゴキッといった音が鳴ることがあります。また、半月板が関節の間に挟まって、ある角度で急に膝が動かなくなることもあり、それをロッキングといいます。
ひどい場合には、膝に水がたまってしまうことがあります。
半月板は血管が乏しく、一度損傷すると治りにくい組織なので、これ以上損傷しないよう治療を受けることが大切です。
切れた半月板を手術で縫うこともありますが、スポーツをする人以外では通常行いません。基本的に、膝の機能を改善するリハビリがメインの治療になります。前述の変形性膝関節症と似たような治療を行います。
腸脛靭帯は、お尻の外側から膝の外側にかけ張っている縦長の組織で、膝や股関節を安定化させる働きがあります。膝に痛みが出る場合は、外側に生じます。特に膝の曲げ伸ばしをくり返すと痛みが出やすく、ランニング、ハイキング、自転車を漕ぐ際などで痛むことが多くなります。
腸脛靭帯炎の原因を説明しますと、大腿骨の膝の部分は、大きく外側に出っ張っているため、膝の曲げ伸ばしで腸脛靭帯と大腿骨が擦れて炎症が生じることにあります。
治療は最新のレーザー光線治療器を用います。当院のレーザー治療器は痛みや熱さを感じさせずに、傷んだ部分にレーザー光線を照射できます。レーザーは細胞を活性化して回復力を高めてくれるため、手で関節を調整する治療と合わせて受けることでより高い効果が期待できます。その効果の高さから、米国では電気治療や超音波治療よりも人気の治療方法になっています。
膝蓋大腿関節障害の症状は、膝の前面・上面のあたりが痛くなる、お皿の骨がずれる、あるいは外れるような不安感がある、膝の曲げ伸ばしでお皿の骨がコキッ鳴るなどで、中には脱臼を伴う場合もあります。
正常な膝では曲げ伸ばしの際に、膝蓋骨(お皿の骨)は大腿骨の前をスムーズに滑りますが、関節軟骨が擦り減ってお皿の骨の動きが異常を来して痛みが発生します。膝蓋大腿関節障害の主な原因は、膝の内側にある内側広筋(大腿四頭筋の一部)が弱くなる、膝の外側の腸脛靭帯が硬くなる、膝周囲の筋肉や靭帯が緩んでいる、大腿骨にある骨の溝が浅いなどです。
膝蓋大腿関節障害の手で行うリハビリ治療は変形性膝関節症とほぼ同様で、膝の機能を回復し、膝の筋力強化を図って膝蓋骨の動きを安定化させます。保存療法で効果がみられない場合は手術を考慮します。
病院での膝の痛みの治療は主に、湿布を膝に張る、鎮痛薬の内服、ヒアルロン酸などの潤滑液を膝の関節に注射するなどの方法で行います。ヒアルロン酸の注射では、軟骨同士の滑りが良くなって痛みが楽になる場合があります。
しかし、これらの薬による治療は、体のバランスや膝関節の動きやなど、膝に負担をかけている原因は改善していないので、すぐに痛みが元に戻ってしまいがちです。湿布も鎮痛薬も、傷んだ場所の炎症を抑える作用しかないからです。
そのため膝の状態を改善するリハビリも必要になります。リハビリをしないと一時的に改善しても再発を防ぐことはできません。