【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2021年2月21日 公開日:2019年11月6日

寝起きの手のしびれは何が原因?

寝起きに起きる手のしびれには、様々な原因がありますが、今回はその原因となる病気としびれの対処方法をご紹介していきます。

 

寝起きの手のしびれの原因には、重篤な病気から慢性的な病気など多くのものがあります。

手のしびれがどの病気が原因で起きているのかを知り、原因に合わせた対策方法を実践すれば、手のしびれを改善していくことができるでしょう。

一般的に手のしびれの原因として多い慢性的な病気は、頚椎症(頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症)、胸郭出口症候群、手根管症候群、肘部管症候群が挙げられます。

また、重篤な病気では脳梗塞、くも膜下出血、脳腫瘍、脊髄腫瘍が挙げられます。

今回は、手のしびれの原因として多い代表的な慢性的な病気の対処法を解説します。

 

各病気の原因としびれの対処方法

寝起きに起こる手のしびれや痛みは、ほとんどのケースで寝ているときの姿勢や格好が原因で発症します。

したがって、それらを変えるだけで、大幅な症状の改善が見込めます。では、具体的にどのように行っていけばよいのかを病気別でご紹介します。

 

首の神経が原因で手のしびれが起きる頚椎症性神経根症

首の神経が原因で起こる手のしびれで最も多いのが頚椎症性神経根症です。

頚椎症性神経根症とは、頚椎の中を通る神経が枝分かれする部分で骨や軟骨などにより圧迫されることで、肩から腕、そして手にかけて痛みやしびれが起きる病気です。

この病気の大半の人で首を反らす動作によって痛みやしびれが強くなります。頚椎症性神経根症の原因として、頚椎の老化や日常における首への負担が挙げられます。

症状がひどくなると、手や腕の感覚がにぶくなることや、手指の筋力が低下することもあります。

また、頚椎症性神経根症を患うことが多いのがデスクワークをしている人たちです。

長時間にわたり、同じ姿勢でパソコン画面を見ているうちに姿勢が崩れ、首が前のめりになります。

そうなると頚椎の負荷が増大し、長い年月をかけて頚椎が変形して首の神経が圧迫されて症状が出やすい状態になります。

 

 

頚椎症性神経根症で手のしびれを防ぐ対処法

頚椎症性神経根症を患っている人が、寝ているときや寝起きで手のしびれを起こさないようにするには、高い枕を使うことです。

低い枕を使うと、首が後ろに反る形になるため、首の神経が圧迫されて腕の痛みや手のしびれで目が覚めやすくなります。

高い枕を使うことで、首の神経の圧迫が和らぐ形になるため、手のしびれが出にくくなります。

また、横向きで寝る場合は、痛みやしびれがある側を下にして寝ると、首の神経が圧迫されて症状が出やすくなります。

そのため横向きで寝るときは、痛みやしびれがある側を上にして寝るとよいでしょう。

 

胸郭出口症候群が原因で起きる手のしびれ

胸郭出口症候群とは、首から鎖骨の下あたりで神経や血管が圧迫されたり牽引されたりして、腕や手にしびれや痛みが出る病気です。

この症状は主に、つり革をつかんでいる時や上にある物を取ろうとする時など、腕を上に挙げる動作で症状が出現します。

また、寝ている姿勢によっても痛みやしびれが腕にあらわれます。

胸郭出口症候群の原因は、むち打ち、慢性的な肩こり、運動による筋肥大などがあります。

 

胸郭出口症候群による手のしびれが出ないようにするには

胸郭出口症候群の人が寝るときにしびれを出さないようにするには、うつ伏せ寝をしないことです。

うつ伏せ寝の姿勢は、鎖骨付近の神経や血管の圧迫を強くしてしまうからです。

症状が出ないようにする対策は、仰向けで寝る際に腕の位置をタオルで少し高くすることです。

腕を少し高くすると、首から腕に伸びて行く神経がゆるむことで腕の痛みやしびれが出にくくなります。

また、枕の高さも首の正しい前弯カーブを作ることで、腕に伸びる神経への負担を軽減することができます。

 

手根管症候群が原因で起こる手のしびれ

手根管症候群とは、手根管という手首の手のひら側にある神経の通り道が圧迫されることで、手のしびれや筋力低下が出る病気です。

手根管は、正中神経の通り道なので、正中神経が支配する母指から中指と、環指の一部にかけてしびれが出現します。

また、女性では、妊娠出産期や更年期に手根管症候群が起こることがあります。

 

手根管症候群による手のしびれが出ないようにするには

手根管症候群の方で、寝るときに気をつけることは、手首を曲げて寝ないことです。

手首を曲げることで、手根管の中を通る正中神経が圧迫されて症状が出現します。

そこで手根管症候群の対処法は、手首が曲がりにくくなるようにサポーターを手首に着用して寝ることです。

寝ている間に手首を曲げた状態が長時間続き、手根管症候群を悪化させてしまうので、サポーターの着用はお勧めの対策です。

 

肘部管症候群が原因で起こる手のしびれ

肘部管症候群とは、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫や牽引をされ、小指と薬指および前腕の小指側のしびれ、さらには小指、薬指などの筋力低下が起きる病気です。

肘部管症候群の原因は、ガングリオンという腫瘤による圧迫や加齢に伴う肘の変形などが挙げられます。

また、症状が尺骨神経領域の小指と薬指で起こるため、頚椎症性神経根症との鑑別が必要です。

 

肘部管症候群による手のしびれを防ぐ対策

肘部管症候群は、長時間にわたって肘を深く曲げることで、尺骨神経が圧迫、牽引されて症状が出現します。

そこで、肘部管症候群の人が寝るときに気をつけるとよいことは、肘をできるだけ伸ばして寝ることです。

肘が曲がりにくくなるように、肘にサポーターを着用したり、包帯を巻いたりする対策が有効です。

 

寝起きの手のしびれ対策のまとめ

今回、ご紹介した寝起きの手のしびれや痛みの対策はいかがだったでしょうか。

自分の症状がどの病気なのかをしっかり理解し、正しい対策を行なえば、寝起きの手のしびれの解消につながることでしょう。

また、今回ご紹介した病気以外で、脳梗塞、くも膜下出血、脳腫瘍、脊髄腫瘍などの重篤な病気の可能性もあるので、まずは専門医を受診し、これらの病気ではないことを確認してから対策を行うことが大切です。