【執筆者】整形外科医 竹谷内 康修 

慈恵医大卒。福島県立医大整形外科に入局。米国のナショナル健康科学大学でリハビリ技術を習得。2007年東京駅の近くで開業。著書・マスコミ掲載多数。

最終更新日:2019年12月4日 公開日:2019年12月4日

腰部脊柱管狭窄症には3つのタイプがあります。神経根型、馬尾型、混合型の3つです。

神経根型とは

腰椎部の脊柱管には、馬尾(ばび)という脊髄から続く神経の束が通っています。その馬尾という神経の束から神経の枝が足に向かって左右に分かれて出て行きます。枝分かれした神経は椎間孔という椎骨の間にある隙間を通ります。そこで押されると神経根型の腰部脊柱管狭窄症になります。

左右どちらかの神経が圧迫された神経根型は、片足に痛みやしびれなどの症状が現れます。左右に枝分かれした神経が同時に圧迫されると、両足に痛みやしびれが現れます。

馬尾型とは

次に、脊柱管の狭窄が中心部で起きると、神経の束である馬尾が圧迫されます。それによる障害が馬尾型と呼ばれます。馬尾型では、症状は痛みよりしびれのほうが強くあらわれます。また、神経根型が片足だけに症状が出ることが多いのに対し、馬尾型は脊柱管の中心部で圧迫されるので、通常、症状は両足に出て、お尻から足、足先の広範囲に及びます。

馬尾は膀胱や直腸の働きにも関係するため、頻尿や残尿感、便秘などの症状がでることもあります。馬尾型は神経根型に比べ、より重症な病態といえます。

混合型とは

混合型は神経根型と馬尾型の両方の症状を併せ持ったタイプです。 脊柱管の中心部で押されるだけでなく、出口付近でも圧迫されるタイプです。3つのタイプのうち、最も重症で、治りにくい状態といえます。

・ どこの部位で神経が圧迫されるか?

腰部脊柱管狭窄症は、神経が圧迫される部位によって、痛みやしびれの出る部位に違いがあります。神経が圧迫される部位は多い順に、第4腰椎と第5腰椎の間(L4/5)、第5腰椎と仙骨の間(L5/S)、第3腰椎と第4腰椎の間(L3/4)です。

・ 馬尾型の症状とは?

馬尾が圧迫された場合の症状とは、足のしびれと痛み、足の脱力感、皮膚の感覚障害、会陰部のしびれ、灼熱感、肛門周囲のほてりなどです。また、便秘、残尿感、頻尿など、膀胱直腸障害による症状も起きます。馬尾型の足のしびれの特徴は、しびれが足の広範囲に広がって現れることです。馬尾は、神経が枝分かれする前の束になった部分ですので、複数の神経が支配している領域に症状が現れるのです。

・ 神経根型の症状とは?

神経根は、馬尾から枝分かれして脊柱管を出ていく部分のことをいいます。馬尾から枝分かれするのは第1~第5腰神経、第1~第3仙骨神経があり、それぞれ左右対になっています。つまり、左右8本ずつの神経根があります。

8対ある神経根のうち、1本の神経根が圧迫されると、1本の神経根が支配している臀部や足の一部に症状が現れます。つまり、臀部、大腿、下腿、足の一部分に痛みやしびれなどが現れます。

痛みやしびれの症状がある場所と障害されている神経の関係

神経根型では、症状の部位から、8対ある神経根のうちどれが障害を受けているのかある程度推測することができます。馬尾型は、神経の束が圧迫されているので、複数の神経にまたがった症状が両下肢に出ます。典型的な症状のパターンと障害されている神経根の関係を説明します。

1. 太ももの外側、すね、ふくらはぎの外側の痛みしびれ

腰部脊柱管狭窄症で最も多い症状のパターンは、腰からお尻にかけての痛みに加え、太ももの外側、すねやふくらはぎの外側、足の甲、足先にかけての痛みやしびれです。これは、第4腰椎と第5腰椎の間のレベルで脊柱管の狭窄が起こり、第5腰神経の神経根の部分が圧迫されたことによる症状です。

2. 太ももの裏側、ふくらはぎ、足底の痛みしびれ

二番目に多いパターンは、腰、お尻、太ももの裏側、ふくらはぎ、足底にかけて痛みやしびれが出るパターンです。これは、第5腰椎と仙骨の間のレベルで脊柱管の狭窄が起こり、第1仙骨神経の神経根の部分が圧迫されたことによる症状です。

3. 太ももの前面、膝の内側、すねの内側に痛みやしびれ

前述の2つに比べて頻度は少ないものの、鼡径部(足の付け根)から太ももの前面、膝の内側、すねの内側に痛みやしびれが現れるパターンがあります。これは、第3腰椎と第4腰椎の間のレベルで脊柱管の狭窄が起こり、第4腰神経の神経根の部分が圧迫されたことによる症状です。

4. 太ももに加え、膝から下全体のしびれ

前述の3つは、神経根型の症状ですが、神経の束である馬尾が圧迫される馬尾型は、両足の広い範囲にしびれや痛みが出ます。太ももに加え、膝から下の全体にしびれが広がります。会陰部の灼熱感、肛門周囲のしびれをともなうこともあります。

第4腰椎と第5腰椎の間のレベルの狭窄が最も多く、第5腰椎と仙骨の間のレベル、第3腰椎と第4腰椎の間のレベルが続きます。

腰部脊柱管狭窄症の診断法

腰部脊柱管狭窄症の臨床的な診断は、詳しい問診と診察で行います。さらにMRIも行えば確定的な診断を下すことができます。ただし、重症でなければ、MRIは必須の検査ではありません。手術が治療の選択肢として考えられる状態であれば、MRI検査を受けたほうがよいでしょう。竹谷内医院では必要性を考慮の上、提携している医療機関で腰椎MRIを撮ることがあります。

一方、レントゲン検査は、神経が映らないため、診断上必要な検査ではありません。

腰部脊柱管狭窄症の重症度分類

腰部脊柱管狭窄症の重症度を五段階で分かりやすく分類しました。これは竹谷内医院のオリジナルです。ひと口に腰部脊柱管狭窄症と診断されても、程度が軽いのか、あるいは重いのか、患者さんには分かりにくいものです。整形外科の病院でも担当の先生が、重症度まで明確に説明してくれなることは少ないと思われます。各重症度での改善の見通しや治療など、目安も解説しました。

腰部脊柱管狭窄症の重症度分類(オリジナル)

初期:間欠跛行なし、日常生活に支障なし。
解説:ほとんどの人が薬やリハビリなどの保存療法で治る。

軽症:立位あるいは歩行で症状が悪化するが、間欠跛行はないか、30分以上は続けて歩ける。
解説:保存療法で治ることが多い。

中等症:10~20分程度で間欠跛行。
解説:早期に根本的なリハビリ治療を受けたほうがよい。保存療法で治らない人が多くなる段階。手術を受ける人もまれにいる。

重症:10分以下で間欠跛行あり。
解説:根本的なリハビリ治療を受ければ改善する場合もある。しかし、保存療法で効果が出ない人も多く、手術を受けるか真剣に検討する段階。

最重症:5分以下で間欠跛行。足の脱力・筋力低下がある。膀胱直腸障害が出ている
解説:保存療法で治らない人がほとんど。手術を要検討。

※重症度は固定されたものではなく、進んでしまう人も多くいます。重症の人も多くは初期や軽症から始まり悪化した結果、重症になったのです。また、重症度が高くなると保存療法で治りにくくなりますが、たとえ最重症でも保存療法で改善する人もいます。例外はどの段階でもあることをご承知おき下さい。

【関連ページ】

・腰部脊柱管狭窄症とは
・腰部脊柱管狭窄症の症状
・腰部脊柱管狭窄症の分類
・腰部脊柱管狭窄症の治療法

各ページで腰部脊柱管狭窄症の詳細を解説しています。